2018 Fiscal Year Annual Research Report
Electronic and optical functionalities of metal-organic framework films with vrystallographic orientation
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17H06237
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20288559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 健司 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (30750301)
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50613296)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 有機-無機ハイブリッド / 多孔性材料 / ヘテロエピタキシャル / プラズモン吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案では、我々の報告しているナノ水酸化物結晶をヘテロエピタキシャル成長の足場として用い、配向性MOF薄膜の合成手法と化学的多様性を確立する。さらに、配向性MOF薄膜の電子的、光学的応用を開拓することを目的とする。MOFを電子・光学材料として用いる方法として、MOFの細孔内への機能性分子や、金属、機能性ポリマーの導入が挙げられる。デバイススケールで配向したMOF薄膜の細孔内に機能性材料を導入し、デバイス化を達成することは一つの重要な応用である。配向MOFの細孔径や化学的特性の多様性を増やす研究や、MOFの配向性や化学的特性が配向MOF薄膜の物性に及ぼす影響などを基礎科学的な知見の構築も行う。具体的な研究項目は以下の通り。 (1) MOFの骨格自体の化学的多様化:金属種、配位子、結晶構造の多様化、結晶子サイズの制御 (2) 配向したミクロ孔を利用した応用開拓 (3) 配向性MOF 多結晶薄膜を利用した電子的/光学的応用の開拓 研究項目(1)に関して、水酸化物結晶表面では形成できない特殊なリンカーから形成されるMOFのヘテロエピタキシャル成長を、MOF-on-MOFアプローチを用いることで実現し、化学的多様性を大きく拡張した。さらに、大面積で配向した特長を活かした応用の一つとして、異方的なプラズモン共鳴を観測し、世界に先駆けてフォノン拡散とプラズモン共鳴がカップリングすることによるプラズモンダンピングを実験的に実証した。また、線形色素等をMOF細孔に配向導入することで、蛍光の増幅や特異なエネルギー移動を示すことを見いだしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、金属水酸化物結晶表面では形成できない特殊なリンカーから形成されるMOFのヘテロエピタキシャル成長を、MOF-on-MOFアプローチを用いることで実現し、化学的多様性を大きく拡張した。水酸化物結晶表面では、複数種の水素結合部位を有するリンカーを用いた金属有機構造体の成長ができないという問題があった。これは、金属水酸化物結晶の表面活性が高く、構造形成に関与しない水素結合性官能基が水酸化物表面と水素結合を形成し、ヘテロエピタキシャル成長の必須条件である格子整合を阻害するためである。そこで、下地として配向性の金属有機構造薄膜を格子整合する成長基板として用いることで、この問題を克服した。得られた金属有機構造体(MOF)の多層膜の積層構造は、表面から反応性官能基MOF/配向性MOF/金属水酸化物/基板となる。水酸化物/基板以外のすべての界面で格子整合しており、大面積配向性MOF多層膜(MOF-on-MOF)の形成に成功した。この新しい配向性MOF-on-MOF薄膜は、最表面に反応性官能基を有するMOF層で形成されており、PdCl2等の触媒活性を示す金属化合物やAg+イオンなどを特異的に吸着することを実験的に示した。特に、Ag+イオンは吸着後に還元処理することで、Agナノ粒子を形成し、ユニークなプラズモン共鳴を示した。干すトロなるMOF格子が構造的異方性を有しているために、入射孔の偏光に対してプラズモンダンピングを示した。プラズモンダンピングは、プラズモン共鳴がフォノン拡散とカップリングすることで発現することが計算により示されており、本研究で得られたMOF-on-MOF薄膜は、数少ない実験的観測である。この成果は、最近Angewandte Chmie誌(IF=13)に受理されるとともに、研究構想図が同誌の表紙として採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度までに、MOF-on-MOF薄膜を用いることで、化学的多様性を実現できること、MOF格子の構造に依存したユニークな物性を付与できることを先駆的に示せた。2019年度では、研究の比重を項目(3)の電子的/光学的応用の開拓へとシフトしていく。配向MOF薄膜の利点を特に活かすことのできる機能性として、電子伝導性(電子移動の頻度と方位が制御できる)、光機能性(光と物質の相互作用を増大できる、励起エネルギー移動の方位と頻度を制御できる)、熱拡散(ミクロ孔の方位により熱伝導性を制御できる)を選択する。 金属水酸化物上への配向MOF薄膜のヘテロエピタキシャル成長は、提案者らにより見出された全く新しい化学プロセスであることから、発見者による先行利益を享受することができる。また、これまで存在しなかった大面積で方位が揃っている配向したミクロ孔を持つ薄膜であることから、全く新規な応用領域の開拓も期待される。特に、電気特性の開拓に重点を置く。導電性高分子をMOF格子内で配向成長することで導電性を有する配向MOF薄膜を実現する。配向したミクロ孔にEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)を添加し、高分子化することで、高度に伸長するとともにマクロスコピックスケールで配向した導電性高分子PEDOTを形成する。このようなMOF・高分子コンポジット膜は、異方性かつ高い電気導電性とともに優れた機械特性を示すことが予想され、実用材料としての利用が大いに期待できる。その後、ゲスト物質を単分子系にも拡張する。TCNQ系は配向MOF薄膜が形成可能なCu系MOFで高い伝導率が報告されており、配向MOF薄膜を用いることで、電導方向とミクロ孔の配向方向を合わせることでより高い伝導性が期待できる。
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