2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H06271
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 宏 北海道大学, 医学研究院, 教授 (00146672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乃村 俊史 北海道大学, 大学病院, 講師 (50399911)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 魚鱗癬 / revertant mosaicism |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性魚鱗癬などの遺伝性角化症では、身体の一部において体細胞組換えにより病因遺伝子変異が消失し、自然治癒する現象が知られており、これをrevertant mosaicism(復帰変異モザイク)と呼ぶ。本研究では、遺伝性角化症において体細胞組換えが起こる機序の解明を目指した。本年度はまず、疾患で認められる変異タンパク質自体が組換えを誘導するか否かを検討するために、変異タンパク質を強制発現した細胞をフローサイトメトリー法や免疫染色を用いて解析した。結果、変異タンパク質を発現した細胞では細胞周期のS期においてRAD51(組換えにはRAD51のfoci形成が必要である)のfociが増加することがわかり、変異タンパク質が体細胞組換えを誘発している可能性を示すことができた。次に、変異タンパク質により誘導された組換えが、DNA複製ストレスに伴う複製フォークの停止に起因するものか調べるために、DNA fiber assayを用いて、複製フォークの解析を行った。結果、変異タンパク質の過剰発現により複製フォークのスピードが低下し、左右非対称なフォークの頻度が増加していた。これらの結果は、変異タンパク質によりDNA複製ストレスを引き起こしていることを示唆しており、現時点では、変異タンパク質がDNA複製ストレスおよびそれに引き続くbreak-induced repairを引き起こし、組換えを生じる可能性を第一に考えている。これらの結果をもとに、次年度以降の研究計画を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は当初の予定通り、変異が組換えに与える影響と組換えを増加させる機序の検討を行った。結果、変異タンパク質が組換えを誘導すること、ならびに、その機序がDNA複製ストレスおよびそれに引き続くbreak-induced repairであることを示すことができた。本研究の申請段階では、変異タンパク質がDNA double-strand breakを誘導する可能性を考えていたが、現在までに得られた結果からすると、変異タンパク質はむしろDNA複製ストレスおよびそれに引き続くbreak-induced repairを引き起こしているようであり、当初の仮説とは異なるものの、変異が組換えに与える影響と組換えを増加させる機序の検討を済ませることができ、概ね順調に経過していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に得られた「変異タンパク質がDNA複製ストレスおよびそれに引き続くbreak-induced repairを引き起こす」可能性をさらに検証するために、一本鎖DNAを標識する抗RPA抗体や抗BrdU抗体を用いた免疫染色、ならびに、DNA-end resectionの有無を評価するためのDNA fiber assayを実施する予定である。その後、当初の予定通り、RNA-seqを用いて変異タンパク質が遺伝子発現に与える影響を評価する。さらに、変異タンパク質が体細胞組換えを誘発する際の作用点を解明するべく、ChIP-Seq、共免疫沈降法、ツーハイブリッド法を用いて、変異タンパク質が結合する物質の特定を行う予定である。
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