2018 Fiscal Year Annual Research Report
Auditory Ambient Noise Control Compensating Vestibular Sensation and Supporting the Sense of Equilibrium for the Eldery
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17H06291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 仁彦 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20159073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 江 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (20641880)
池上 洋介 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (90774414)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者 / 前提感覚 / アンビエントノイズ / 姿勢安定化 / 聴覚介入 / IMU / 行動理解 / 奥行知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、以下の2点で研究の進展があった。 はじめに、高齢者の転倒リスクを評価するための計測法としてビデオ映像を用いたモーションキャプチャ技術を採用した。この技術は科研費 基盤研究(A)で平成29年度に代表者らが開発したものである。生活空間での日常におけるデータを取得する環境を整備した。姿勢安定化と転倒に関わる高齢者の内発的な変化としての奥行知覚能力の変化に着目した研究を行ない、奥行知覚能力を簡便に評価する方法として錯視課題を用いる方法を提案した。この研究によって、高齢者へのフィードバックには単なる計測情報の提示ではなく、空間知覚能力の変化を考慮した情報提示が必要なことが分かった点が重要な成果である。 もう一つは、聴覚提示による姿勢安定化に関するものである。運動中にシーケンスとしての動作系列が存在する場合に動作系列のタイミングの精度評価を音響情報で直感的に提示する方法の研究を行った。これはゴルフスイングのトレーニングから始めた研究であるが、音響情報で運動情報を直感的に提示できるか、どのような広義の変調が有効かに関係しており、高齢者の動作や姿勢安定化への展開を進めている。音響情報の提示について、人間が差を知覚しやすい音響的特徴、提示する情報量と音響情報の複雑さの関係についての理解が深まった。この成果は研究代表者らが発明者となり、東京大学を出願人として令和元年5月末までに出願する予定で、明細書の最終確認を行っている。 この他には、前提感覚情報の取得に関して、平成29年度に続いてIMUセンサ情報の処理に取り組んだ、IMUセンサの精度検証と、ジャイロ信号、加速度信号のカルマンフィルタリングで動的非干渉化する方法、ドリフトの少ない積分法の開発を行った。全身筋骨格シミュレーションでは中枢神経系と筋をつなぐ神経系のモデルを作成し、皮質反射を含めたシミュレーションが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下のような項目と年次進行で計画し実施してきている。 (1)アンビエントノイズの前庭感覚変調を行う聴覚提示デバイスの開発(1 年目)、(2) 前庭感覚の衰弱を代償するアンビエントノイズ変調法の開発(1-2年目)、(3)聴覚による前庭感覚代償を用いた姿勢安定化のトレーニング法の構築(2-3年目)、(4)全身神経筋骨格シミュレーションによる姿勢安定化再建の機序の解析(1-3年目)、(5)姿勢安定化支援と高齢者の転倒リスクの評価(3年目)
平成29、30年度の研究成果として、前提感覚情報を取得するIMUシステム(上記(1))、音響情報による運動情報の提示法(上記(2)、(3))、全身筋骨格系モデルによる姿勢安定化シミュレーション法(上記(4))、高齢者の生活環境における姿勢安定性の計測と評価法(上記(5))の成果を得た。研究は研究実績の概要で述べたように、当初計画に沿って重要な成果も生まれており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本研究の最終年度である。高齢者の日常生活における転倒などの運動にかかわる問題の自動的な認識や、それを実時間で計測して音響情報にフィードバックするための基盤技術を確立する。さらに、高齢者の姿勢安定化に寄与する音響提示装置の完成を目指す。
聴覚提示の方法としては、いくつかの点で選択が必要なことが分かってきた。ヘッドホン型の音響提示は提示音の描画性能は高いものの、高齢者にとっては外界の情報の一部を遮断することでもあり、慎重な検討が必要である。最近では、一般の音楽鑑賞用でも屋外での利用では開放型のヘッドホンやイヤホンが注目されている。運動のトレーニングにおける情報提示では、音響情報の違いの感受性と、音響情報として提示できる情報量に代表者らは着目している。提示する音響情報として、自然音場を歪めるだけ留めるのか、人工的で聴覚に知覚されやすい音を加えるのかを検討中である。後者は、提示できる情報量を増やすことができる点に長所がある。本年度の前半では両者の実装と比較実験を行なう。後半では最終的に姿勢安定化のための音響提示デバイスを完成させる。
さらに、提示する情報としては単純な前提感覚に代わるIMU情報の提示から、「広義の意味での変調」を行い、動作系列から高齢者の運動を判別することで、危険性や異常性のサインを見つけた際にフィードバックを知覚して、落ち着いて運動を変化させることができるための音響提示の在り方についても検討を行う。
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Research Products
(10 results)