2017 Fiscal Year Annual Research Report
Challenges for neutron imaging toward low-dose particle therapy
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17H06298
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90334507)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 中性子イメージング / Time of Flight / 粒子線治療 / 2次被ばく |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、中性子イメージングに必要なコンポーネント開発を中心に、8ユニットまでの実機カメラ試作とサイクロトロン施設におけるビーム試験を行った。センサーとして浜松ホトニクス社製小型PMT(R9880U-210)とEljen社製プラスチックシンチレータ(EJ299-34)30mm角を採用した。EJ299-34 は波形弁別(Pulse Shape Discrimination: PSD)により中性子・ガンマ線の識別がある程度可能であり、Time-of-Flight (TOF)弁別機能とあわせ治療現場で問題となるガンマ線バックグラウンドを軽減できると見込まれる。実験では、まず一対のセンサーユニットに 22-Naからの511keV対消滅ガンマ線を照射し、時間分解能として2.2ns(FWHM), エネルギー分解能として 12.2%(FWHM @1MeV)が得られた。続いて、252-Cfを用いてn/γ波形弁別の最適化検討を行い、Fast/Slow の時定数を100ns,500nsに決定した。PSD のみによる選別でも、1MeV以上の中性子線においてガンマ線混入率を10%以下に抑えることができた。続いて、1層目4ユニット、2層目4ユニットからなる中性子カメラ初号機を試作し、実験室環境下で撮像実験を行った。30cm 前方に置いた3.7MBqの252-Cf 撮像に成功し、線源の位置変化を正しくとらえることができた。最後に、放医研サイクロトロン施設において70MeV陽子線を真鍮ファントムに打ち込み、ここから発生する2次中性子のイメージングを試みた。治療ビームの1/100, 撮影時間1時間の測定条件で様々な位置に対して中性子イメージングに成功し、解像度として15.5度(FWHM)が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に記載した通り(1) 波形弁別 (2) TOF の2つの独立な手法で中性子・ガンマ線の識別を試み、概念設計通りに成功した。さらに、8ユニットからなる試作カメラも問題なく製作完了し、実験室環境だけでなくサイクロトロン施設においてもイメージング実験に成功し、予定通り十分な進展が得られたと評価できる。そのため研究自体はおおむね順調に進展しているが、今後対策すべき問題点も明らかになりつつある。一つは、ガンマ線バックグラウンドがシミュレーションで想定した環境より高く、サイクロトロン実験においては鉛による外部シールドの設置が不可避であった。今後は、データを取得するエネルギーウィンドウの最適化やセンサーユニット自体にガンマ線除去シールドを追加する可能性も含め、新たなn/γ弁別機能の追加が必要であると考える。さらに、実際の陽子線治療施設における実験は平成29年度には実施できておらず、200MeVかつ強度の強い陽子線照射下における実験をなるべく早急に目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度における要素開発に引き続き、平成30年度はより実際の陽子線治療施設に近い環境・ビーム条件で、中性子イメージングシステムの開発を続行する。Geant-4シミュレーションによれば、陽子線治療時に体内から発生するガンマ線は2次中性子線より10倍以上レートが高いが、これらのほとんどは原子核反応に由来するため10MeV以下のエネルギー帯に限られる。従って、取得データを10MeV以上のエネルギーに限定することができれば、鉛等による追加シールドを必要とせず、軽量かつ効率よく中性子のみが選別できる可能性が高い。一方で、10MeVの中性子は光速の1/10以上の速さを持ち、TOF 弁別が徐々に難しくなる。平成29年度は、これらスペクトル情報まで加味した最適化が出来なかったが、平成30年度以降は多角的に中性子・ガンマ線それぞれに特化した効率のよいデータ弁別を行う。これに合わせ、1層目、2層目のアレイ検出器のサイズを変更すること、また検出器間の最適配置や距離を伸縮することも検討する。これにより、強度が1-10nAの治療ビーム環境下でも短時間(数分程度)で中性子イメージングが可能なシステムを構築したい。さらに、現状用いているデータ処理システムはVME/NIM の市販モジュールをベースにしているが、高速波形ADCサンプリングなど、独自専用モジュールを新たに開発し、応用する可能性も引き続き検討していきたい。
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[Presentation] 粒子線治療下でのイメージングに向けた中性子カメラの開発2018
Author(s)
田川怜央, 片岡淳, 末岡晃紀, 藤枝和也 , 栗原拓也 , 有元誠, 望月早駆, 丸橋拓也, 歳藤利行, 木村充宏, 稲庭拓
Organizer
第 65 回応用物理学会春季学術講演会
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