2017 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of highly-efficient spin injection source by interface modification in half-metallic oxides
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17H06482
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樋浦 諭志 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (30799680)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン注入 / マグネタイト / 走査型トンネル顕微鏡 / 界面修飾 / 局所仕事関数 / 炭素吸着 / スピンデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,Fe3O4とMgOの界面における電子スピン状態をターゲットにして,トンネル分光測定と光スピン物性測定から界面スピン状態を評価し,Fe3O4薄膜を用いた高効率スピン注入源を創出することを目的としている.平成29年度に得られた主な成果は以下の3点である.
(1) 走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いることで,MgO単結晶上に作製した水素吸着Fe3O4薄膜表面の仕事関数を原子レベルで測定し,水素原子近傍における局所仕事関数の低下を観測した.また,水素吸着量の増加に伴い,局所仕事関数の低下量が増加することを明らかにした.この局所仕事関数の低下は,水素原子とFe3O4表面の間での電子移動の存在を明確に示しており,水素吸着によるFe3O4表面のスピン偏極度向上機構の実験的解明に向けて有益な知見である. (2) 炭素原子吸着によるFe3O4薄膜とMgO薄膜の界面修飾に向けて,炭素蒸着機構を現有の超高真空STM装置の導入チャンバーに構築し,蒸着条件の最適化をおこなった.また,X線光電子分光法,低速電子線回折法,STMを用いることで,炭素吸着量の変化とそれに伴う表面原子構造の変化を調べた.その結果,清浄表面は(√2×√2)R45°再構成構造を示すのに対して,炭素吸着後はp(1×1)構造に変化することを明らかにした. (3) スピン偏極発光特性の測定からスピン注入源の界面スピン状態を評価するために,本年度はスピン注入源にCoFe/MgO薄膜,光学活性層に自己組織化InGaAs量子ドットを用いたスピン偏極発光ダイオード素子を作製した.電流電圧特性の測定から,リーク電流が少なく,良好なダイオード特性が得られることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素蒸着機構の新規導入ならびに蒸着条件の最適化,炭素吸着表面の原子構造解析を行い,良好な結果が得られている.MgO薄膜の蒸着機構については超高真空STM装置への設置をまだおこなっていないものの,詳細な検討を行うことで蒸着方法と蒸着条件の見通しは既にたっている.スピン偏極発光ダイオード素子の作製に関しては,プロセス上の問題点は現状発生しておらず,引き続き研究を遂行する.水素吸着Fe3O4薄膜表面の研究において,水素吸着量と仕事関数低下量の相関関係が明らかになるなど,研究開始当初は予想していなかった発見も相次いでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が本研究の最終年度であるため,これまでに得られている水素吸着Fe3O4薄膜表面の電子移動現象に関する研究成果を優先して論文にまとめる.MgO/Fe3O4界面の電子状態測定については,MgO薄膜の作製条件の最適化を早急に行い,研究を推進する.また,スピン偏極発光ダイオード素子の光学活性層に高密度InGaAs量子ドットを用いることで,光学活性層への電子スピン注入効率の向上および光学活性層における電子スピン緩和の抑制を図り,Fe3O4/MgOスピン注入源を用いた光スピン素子のスピン偏極発光特性の向上を目指す.
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Research Products
(7 results)