2017 Fiscal Year Annual Research Report
日常場面におけるセルフ・ライセンシング:意志力の暗黙理論に着目した検証
Project/Area Number |
17H06494
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
櫻井 良祐 北海道教育大学, その他部局等, 特任講師 (20802961)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 自己制御 / セルフ・ライセンシング / 意志力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は次の2つであった。第1の目的は、セルフ・ライセンシング(自己制御の失敗に対する事前の正当化)の生起が、意志力の暗黙理論の個人差によって調整されるかを検証することであった。第2の目的は、セルフ・ライセンシングが日常場面でも生起するかについて、生態学的妥当性の高い方法を用いて検証することであった。 平成29年度はまず、意志力の暗黙理論の個人差を測定するために、Implicit Theories About Willpower for Strenuous Mental Activities Scale (ITW-M)の日本語版の作成をおこなった。はじめに、原著者から翻訳の許可を得た上で、再翻訳法を用いて意志力の暗黙理論尺度の日本語版を作成した。大学生を対象とした質問紙調査を実施し、意志力の暗黙理論尺度6項目に対して探索的因子分析をおこなったところ、原尺度(1因子構造)とは異なり、2因子解が採用された。この結果は2種類の調査で共通して確認されたため、因子構造は安定したものだと判断した。続けて、尺度の妥当性を確認するため、先行研究に基づき、自己制御等の関連概念や、GPA等の学業成績との関連を検証した。結果、おおむね先行研究通りの結果が得られたことから、意志力の暗黙理論尺度の日本語版について一定の妥当性が示されたと判断した。 次に、意志力の暗黙理論がセルフ・ライセンシングの生起を調整するかについて生態学的妥当性が高い形で検証するために、教育実習に着目した研究を実施した。具体的には、教育実習前後に、自己制御の不全に対する罪悪感や、実習中の先延ばしの頻度を測定し、事前に測定した意志力の暗黙理論の個人差と合わせて、教育実習の成績に影響を与えるかを検証することを目的とした。現在、学内の担当部署に教育実習の成績データの提供を依頼しており、取り寄せ次第分析をおこなう予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの質問紙調査を通じて、Implicit Theories About Willpower for Strenuous Mental Activities Scale (ITW-M)の日本語版の作成を試みた。結果、原尺度と異なり2因子解が採用されたものの、自己制御等の関連概念や、GPA等の学業成績との関連は全体として先行研究と合致したことから、意志力の暗黙理論尺度の日本語版の作成は一定の成功を収めたと言える。さらに、教育実習中の自己制御過程に焦点をあてた研究によって、生態学的妥当性が比較的高い形でセルフ・ライセンシングの生起を検証することも試みている。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度からの質問紙調査を引き続きおこなうとともに、多様な自己制御場面に焦点をあてた研究を実施することで、意志力の暗黙理論によるセルフ・ライセンシングの生起の調整効果について、より詳細に検証する。
|
Research Products
(12 results)