2017 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Low Friction Protein Film for Mechanical Seal of Next-Generation Assistant Heart
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17H06517
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神田 航希 東北大学, 工学研究科, 助教 (60803731)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | タンパクフィルム / バイオトライボロジー / 表面自由エネルギー / 血漿タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助人工心臓は心疾患を有する患者の心臓を心臓移植までの期間に補助し,生存を可能にするのみならず社会復帰を可能にすることができる.駆動のための電力は患者が体外に携行するバッテリーユニットから供給されるため,システムの消費電力の低減によりバッテリーの寿命を延長し患者のQOLを更に向上することが可能となる.そのため補助人工心臓内部でインペラの潤滑を担うメカニカルシールには低く安定した摩擦係数が求められる.「次世代型補助人工心臓用メカニカルシールのための低摩擦発現のためのタンパク膜創成」を最終目的とする本研究において,1年目の本年は血漿タンパク質溶液中におけるしゅう動面に着目し,メカニカルシールの摩擦系を簡便に模擬したボールオンディスク型摩擦試験機を用いて血漿タンパク質の吸着挙動を実験的に明らかにした. 得られた具体的な成果は以下の通りである. 1 紫外線照射を用いて炭化ケイ素ディスク上における水の接触角を95°から28°に低下させたことにより,血漿中における摩擦係数が0.5から0.3に低下した. 2 アルブミンは摩擦により炭化ケイ素ディスク上の凹部に堆積する一方,フィブリノーゲンは平滑面上に吸着することを明らかにした. 3 炭化ケイ素ディスクの親水化に伴い,アルブミンとフィブリノーゲンが均一に混在するタンパク膜が形成されることを明らかにした. 4 アルブミンまたはフィブリノーゲンのみの単一溶液では均一なタンパク膜が形成され得ないことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画調書中H29年度の計画においては「1.簡略化した摩擦系を用いたその場観察型摩擦試験機の開発・製作」および「2.しゅう動面上におけるアルブミンおよびフィブリノーゲン分布の経過観察」を目的としていた. 1.については既に製作を完了している. 2.については,H29年度に観察を行ったのはタンパク膜形成過程終了後の摩擦面のみで有り,タンパク膜の形成過程における経過観察には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度においてはタンパク膜形成過程におけるアルブミン及びフィブリノーゲンの経過観察を行う.この際環境温度および基材の形状をパラメータとし,それぞれがタンパク膜の形成形態,およびタンパク質の分布に及ぼす影響を明らかにする. ・温度の影響 タンパク質は温度により熱変性し,凝集することが知られている.ここでアルブミンとフィブリノーゲンの熱変性温度は異なることから,周辺環境の制御により一方のタンパク質のみを変性させる事が可能であると考えられる. ・形状の影響 タンパク膜は基材上の凹部形状を起点として形成され,摩擦係数を増大させることが既に知られている.またメカニカルシールを用いた実験系においてはレーザー起因の微細周期構造の創成により血液中における低摩擦が発現し,薄く均一なタンパク膜が形成される.すなわちタンパク膜の形態およびこれにより発現する摩擦係数は基材上の形状により支配されることから,任意に形状を制御した基材を用いて摩擦試験を行うことでタンパク質の形成機構を推定可能であるといえる. 以上の実験的考察によって得られた事実を元に,メカニカルシールしゅう動面に低摩擦発現タンパク膜を創成するための最適設計を提案する.
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