2017 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙環境における骨格筋萎縮のエピゲノム解析による新規筋萎縮治療標的の探索
Project/Area Number |
17H06548
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡田 理沙 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20803498)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 微小重力 / 国際宇宙ステーション(ISS) / 骨格筋 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙空間において骨格筋は急激かつ重度に萎縮するが、微小重力における骨格筋萎縮メカニズムはほとんど明らかにされていない。本研究では、申請者らが既に報告したマウス軌道上飼育装置を用いて、国際宇宙ステーションで35日間の宇宙空間飼育したマウスの骨格筋を対象とし、次世代シークエンンサーを用いた遺伝子発現とヒストン修飾の網羅的解析により、微小重力において骨格筋萎縮を引き起こし、さらに萎縮状態を持続させる制御メカニズムの解明を目的とする。 (1) 次世代シークエンサーによる、微小重力でエピゲノム変化を伴った発現変動をする遺伝子の同定 軌道上飼育したマウス2群(人口重力群、微小重力群、各3個体)のヒラメ筋を対象に、ヒストン修飾(H3K4me3、H3K27ac)に対する抗体を用いたChIP-sequence解析を行った。既に実施していたRNA-sequence解析とこのChIP-sequence解析の結果を比較することにより、遺伝子発現が有意に増加していた247遺伝子のなかで、109遺伝子に転写の活性化マークであるH3K4me3およびH3K27acのヒストン修飾がされていることを明らかにした。さらに、この109遺伝子と、廃用性筋萎縮モデルである尾部懸垂実験のヒラメ筋のRNA-sequence解析との比較により、筋委縮に関連する可能性の高い遺伝子群を抽出した。 (2) C2C12細胞株とアデノウイルスベクターを用いたin vitroスクリーニング 上記の同定された候補遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いてC2C12筋管細胞に導入し、候補遺伝子の発現が筋萎縮を誘導するかを検討した。その結果、候補遺伝子のうち4つの遺伝子がin vitroで筋萎縮を誘導することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いたChIP-sequence解析は完了し、C2C12細胞を用いたin vitroスクリーニングで、萎縮を引き起こす遺伝子を既に4つ同定したことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度には、前年度にin vitroスクリーニングによって同定した、骨格筋萎縮を誘導する遺伝子を、新生仔マウス骨格筋にアデノウイルスベクターを用いて過剰発現させることにより、当該遺伝子の遺伝子発現の増加が個体レベルで骨格筋萎縮を引き起こすことを明らかにする。さらに、当該遺伝子を導入したマウスのヒラメ筋を対象に、組織学的、分子生物学的解析をすることにより、当該遺伝子が骨格筋萎縮を誘導する分子メカニズムを明らかにする。 さらに、上記の実験で同定した当該遺伝子について、遺伝子欠損マウスを作製する。これにより、Loss-of-functionで当該遺伝子機能解析を in vivoで行うことが可能である。このマウスを用いて尾部懸垂実験を行うことにより、骨格筋萎縮における当該遺伝子の重要性を証拠付けることが可能である。
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