2017 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of TET family in dynamic epigenomic alteration induced by EB virus infection
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17H06564
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
南波 宏枝 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (10799654)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 癌エピゲノム / Epstein-Barrウイルス / TET |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌は大きく3つのサブタイプに分類され、Epstein-Barr(EB)ウイルス陽性胃癌はヒト悪性腫瘍の中でも最もDNA高メチル化を呈するサブタイプを形成する。EBV感染そのものがこの特異的な異常高メチル化を誘導する原因であるが、低メチル化胃癌上皮細胞株へin vitroにEBV感染を行うと、DNA脱メチル化酵素であるTETファミリーの発現が抑制され、中でもTET2がメチル化抵抗因子として働くことが明らかとなった。今年度の研究では、メチル化抵抗因子であるTET2を過剰発現させた胃上皮細胞株にEBウイルスを感染させることに成功し、TET2の標的遺伝子に関して通常のメチル化誘導が阻害されること、またヒストン活性化マークが上昇することを明らかにした。それらの標的遺伝子において発現上昇も伴った。このことから、ヒストン修飾変化に働くTET2の協働蛋白質の存在が示唆されたため、それらの蛋白質を同定することを目的に、Haloタグを付加したTET2を胃上皮細胞株にて強制発現させた。細胞破砕液をビーズ精製し、TET2結合蛋白質をSDSPAGEゲルにて確認した。MALDI-TOF MSにてそれらの結合蛋白質を同定する。TETを介した包括的なエピゲノム解析は、このin vitro EBウイルス感染モデルを用いることにより詳細に解析することができるが、その成果はEBウイルス陽性胃癌のみならず、TET関連遺伝子変異による血液腫瘍やグリオーマ含め、多様な高メチル化疾患分子機構解明に寄与し、治療薬開発や既存薬再開発、より効率的な診断方法の確立等直接的に幅広く医学生物学に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、メチル化抵抗因子であるTET2を過剰発現させた胃上皮細胞株にEBウイルスを感染させること(TET2OE_EBV)、及びEBV感染株にTET2を過剰発現させることに成功した(EBV_TET2OE)。TET2OE_EBVに関しては、TET2の標的遺伝子において通常の感染時のメチル化誘導が阻害される領域があることを確認した。それら過剰発現によりメチル化誘導が阻害される遺伝子の発現上昇も伴った。 またエンハンサー領域のヒストン修飾変化も認められ、周辺遺伝子の活性化及び不活化を通して癌化に寄与する可能性が示唆された。TET2のノックダウンのみによってもそれらヒストン活性化マークの減少の一部が認められた。それらの領域において、TET2と協働して働くエピゲノム関連蛋白質を同定することを目的に、Haloタグ付のTET2を胃上皮細胞株にて過剰発現させた。細胞破砕液をカラム精製することで、SDSPAGEゲルにてTET2に結合していると考えられる蛋白質の確認に成功した。今後はMALDI-TOF MSにてそれらの精製済蛋白質を同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究により、EBV感染によりエンハンサー領域のヒストン修飾に変化が生じ、周辺遺伝子の活性化、不活化を通して癌化に寄与する可能性が報告された。申請者はTET2ノックダウンのみによってもそれらの変化の一部が生じることを明らかにし、TET2を介したヒストン修飾変化及びDNAメチル化への影響を解明する。Haloタグを付加したTET2を胃上皮細胞株にて強制発現させ、カラム精製を行うことにより、TET2と協働して働くと考えられる蛋白質の抽出をSDSPAGEゲルにて確認した。今年度はそれらのサンプルをMALDI-TOF MSにて解析し、抽出されたエピゲノム関連因子を同定する。それらの因子や産物であるヒストン修飾の局在及び、TET酵素、DNAメチル化、ヒドロキシメチル化の局在をEBV感染前後、必要に応じて強制発現・ノックアウト下にて比較検討することにより、感染による異常高メチル化への相反的ないし協調的な作用を、TETとの相互作用を含めゲノム網羅的に解析する。それらTET2と協働していると考えられるヒストン修飾酵素に制御される遺伝子群及びその下流の遺伝子群の機能解析として、増殖制御作用の有無をコロニー形成能やヌードマウスでの腫瘍形成能で検証する。
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