2017 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌に対するIL-9発現腫瘍溶解性ウイルスの開発
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17H06568
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 謙悟 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (70451755)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解性ウイルス / 腫瘍免疫 / 口腔癌 / IL-9 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、計画通りIL-9配列をシンドビスウイルスへ導入し、IL-9発現シンドビスウイルスを作製できた。 最初に、マウスIL-9遺伝子のクローニングをシンドビスウイルス遺伝子へ組み込めるように行なった。同時に、改変後に発現を向上させるために、シンドビスウイルスの遺伝子へサブジェニックプロモーターの組込みや、改変polyA配列の付加も行った。次に、クローニングしたマウスIL-9遺伝子をシンドビスウイルス遺伝子のサブジェニックプロモーター化へ組み込み、全長17.2KbpのマウスIL-9発現シンドビスウイルス遺伝子のクローニングに成功した。 次に、マウスIL-9発現シンドビスウイルス遺伝子からIL-9発現シンドビスウイルスを作成した。まず、マウスIL-9発現シンドビスウイルス遺伝子をライナー化し、リバースジェネテッィク法を用いin vitroで逆転写反応し、IL-9発現シンドビスウイルスRNAを精製した。このウイルスRNAをリポフェクション法でBHK細胞へトランスフェクションし、48時間後に発現したIL-9発現シンドビスウイルスを回収した。マウスIL-9発現シンドビスウイルスのゲノム中のIL-9の挿入はPCRで確認した。また、Vero細胞で測定したマウスIL-9発現シンドビスウイルスの力価は5X10E5 pfu/mlであった。野生型のシンドビスウイルスの力価1x10E6 pfu/mlと比較すると低かった。 マウスIL-9発現シンドビスウイルスをマウス頭頚部扁平上皮癌SCC7細胞株へ感染し腫瘍溶解性を確認した。10MOIで感染させた際に、48時間で細胞障害効果(CPE)を観察できた。しかし、野生型シンドビスウイルスでは24時間でCPEを観察されることから、in vitroの条件下ではIL-9発現シンドビスウイルスの増殖が遅いことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りマウスのIL-9遺伝子のクローニングしシンドビスウイルスへ組込む実験系は確率できた。 しかし、準備されていたシンドビスウイルス遺伝子がクローニンしてあるプラスミドは、マウスIL-9遺伝子をそのまま組込むことが出来ないデザインであることが分かり、シンドビスウイルス遺伝子のプラスミドの再構築を行った。また、ウイルスの発現率を向上させるために、ベクターの一部修正も行った。以上の作業が時間を用したため、計画してある異なる位置にIL-9を組み込んだシンドビスウイルスを全て作成できなかった。 また、次年度にin vivoで免疫がある担癌マウスモデルとしてSCC7細胞株とCH/3マウスを使用し、ウイルスと腫瘍に対する免疫評価を行う予定であるが、その免疫評価系のためにSCC7にオボアルブミン(OVA)が恒常発現する株を作成する必要性が出た。そのため、OVA遺伝子をクローニングし、レンチウイルスベクターへ組込み、SCC7へトランスフェクション後に抗生剤にてセレクションを行い、クローン株(SCC7-OVA)を抽出し、OVA発現をFACSにて確認した。この計画以外の実験工程に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、腫瘍溶解性ウイルスであるシンドビスウイルスが、安全に腫瘍免疫誘導能とその抗腫瘍効果を亢進させるため、腫瘍局所のみで免疫調節因子(Interleukin-9:IL-9)を発現する「IL-9発現シンドビスウイルス」の開発を行う。今年度は、引き続き改変部位が異なるIL-9発現シンドビスウイルスを作成し、正常組織細胞株、癌細胞株を用いて、IL-9発現シンドビスウイルスの増殖性、細胞傷害性、IL-9の発現量を評価する。 同時に、既に作成済みのIL-9発現シンドビスウイルスを担癌動物実験において、正常臓器と癌部で、IL-9発現シンドビスウイルスの増殖性、腫瘍溶解性、腫瘍免疫誘導能とその抗腫瘍効果を検討する。以上から最も安全で効果的なIL-9発現シンドビスウイルスを選定する。 具体的に平成30年度は以下のように、主にIL-9発現シンドビスウイルスの安全性と効果を担癌動物実験にて評価する。①担癌動物での腫瘍溶解性と安全性:担癌マウス(SCC7/CH3マウス)へ、IL-9発現シンドビスウイルスを投与(腫瘍内、静脈)し、安全性を評価する。次に、腫瘍溶解性ウイルスとしての治療効果を判定する。②担癌動物での腫瘍免疫誘導性:担癌マウス(SCC7/CH3マウス)へIL-9発現シンドビスウイルスを投与(腫瘍内、静脈)し、胸腺、脾臓、腫瘍の免疫担当細胞の分布を非投与群と比較検討する。③担癌動物での腫瘍免疫による抗腫瘍効果:IL-9発現シンドビスウイルスを投与(腫瘍内、静脈)した担癌マウスの脾臓、腫瘍内から、各CD4陽性細胞(Th1, 2, 9)、CD8陽性細胞を精製し、同系の担癌マウスに移植し、通常のシンドビスウイルスを用いた腫瘍溶解ウイルス療法の効果を検討する。
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