2017 Fiscal Year Annual Research Report
代数的時系列情報を処理するbetaオシレーションの機序解明
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17H06581
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大城 武史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (70807875)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 脳オシレーション / 代数的時系列情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは日常生活において様々な時系列情報を処理している。本研究では、その中でも最も知見の限られている「代数的時系列パターン」と称される“Algebraic patterns(AP)”に着目し、その時系列情報処理に関する脳機能メカニズムを明らかにすることを目的としている。APとはシークエンス間に潜む共通した代数的パターンを意味する。ヒトはAPを知覚処理する脳内機構を生得的に有していると考えられ、実際、乳幼児は言語獲得において、この機構を用いて音韻ルールの獲得を行なっていることが明らかになっている。しかしながら、APの知覚処理が脳内でどのように実現されているのかに関しては未だ殆どが明らかになっていない。そこで本研究では、代数的時系列パターンを作りやすい音のシークエンス課題を用いて検討を行う。また、本研究独自の着眼点として、betaオシレーションの機能特性に着目する。APの知覚処理に特有の挙動を示す“Algebraic beta”を特定し、その機能特性を解明する事でAPの知覚処理の脳内機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、代数的時系列構造を有した音刺激を用いて、32名の健常者(18歳-25歳,女性12名)を対象に認知心理実験を行なった。この課題中における脳活動(脳オシレーション)を、脳波計測装置を用いて計測した。そのうち,体動ノイズなどの多くのノイズ成分を含んでいる3名の被験者を解析対象から外し,29名の被験者のデータに対して解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析の結果、代数的時系列構造を有した音刺激提示中に、後頭、頭頂、側頭を中心とした電極において、low beta(10-15 Hz)オシレーションの強い振幅増大を観察した。次に、このlow betaオシレーションを観察した電極を対象として、Inter-Trial-Phase Clustering(ITPC)と呼ばれる解析手法を用いて、解析を行った。ITPCとは、オシレーション位相の時系列的な挙動が全トライアル間でどれだけ一定の関係を保つのかを評価する指標である。この結果、low betaとdelta(2-4 Hz)オシレーションにおいて、AP構造を有した音刺激提示中に、高いITPCを時系列で観測した。これらの結果は、本研究の仮説通り、betaオシレーション及びdeltaオシレーションが代数的時系列構造を有した音刺激の処理に重要な機能を有していることを示唆する結果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各被験者ごとに異なった音楽習熟度とlow beta及びdeltaオシレーションの関係性を精査していく予定である。高い音楽習熟度を持つ被験者と音楽習熟度の低い被験者群を比較することで、low beta及びdeltaオシレーションがAP構造を有した音刺激処理にどのように関与しているのかを、より詳細に明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)