2017 Fiscal Year Annual Research Report
Boy Actors and Effects of Performance on the Early Modern English Stage
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17H06584
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 明日香 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70807130)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 初期近代イギリス演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本研究に関わりのある学会発表を二回行った。10月7日、8日開催の第56回シェイクスピア学会(於近畿大学東大阪キャンパス)では「モルフィ公爵夫人と少年俳優」と題して、本研究の柱であるジョン・ウェブスターの悲劇と少年俳優というテーマを取り上げ発表を行った。内容としては、まず初演で公爵夫人を演じた可能性の高い少年俳優を1623年に出版された戯曲の版本を含む一次資料から導き出し、この人物がどんな俳優だったかを同時代に上演された複数の戯曲から明らかにした。特に『モルフィ公爵夫人』よりも少し後に上演されたジョンソン『悪魔は頓馬』はリチャード・ロビンソンが魅力的な容貌と演技力を兼ね備えた人気の俳優だったこと、そして背の高い俳優だったことを示すメタシアトリカルな言及を含んでおり、そこから思春期の少年俳優の男性としての身体(背の高さや声の低さ)が舞台上で男勝りな女である公爵夫人の表象にどのような影響を与えたかを論じた。後半ではロビンソンの公爵夫人に対し、国王一座きっての名優リチャード・バーベッジがファーディナンドを演じたこと、バーベッジとロビンソンが師弟関係にあった可能性が高いことを当時の遺書などから明らかにし、二人の関係が舞台上で公爵夫人とファーディナンドの関係に及ぼした影響、ならびに公爵夫人がファーディナンドに象徴される抑圧的な男性権力に反抗する姿が、師匠である名優を超えようとする少年俳優の挑戦と重ねられている可能性を指摘した。10月28日開催の日本英文学会関東支部第15回大会では「初期近代演劇における寡婦表象と喪服の意味の多層性」と題し「モルフィ公爵夫人と少年俳優」で前景化した寡婦の存在をめぐるリミナリティについて、当時の舞台表象で繰り返し寡婦と結びつけられた喪服をめぐるパラドックス―死んだ夫への忠誠を示すと同時に寡婦の性的利用可能性を示す記号でもある―との関連で論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は本研究と関わりのある学会発表を行った一方で、本研究の柱である『モルフィ公爵夫人』の俳優リストをめぐる二つの問いについては糸口を見つけることができなかった。平成30年度こそは渡英を実現し、糸口になるような文献を見つけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度については昨年度から取り組んでいる『モルフィ公爵夫人』の俳優リストをめぐる二つの問いについて糸口を発見すると同時に、シェイクスピア作品における少年俳優に関する記述の洗い出しを進めていく。
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Research Products
(2 results)