2017 Fiscal Year Annual Research Report
高強度テラヘルツ光を用いた高効率スピン流生成原理の創成
Project/Area Number |
17H06601
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 嘉大 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20804735)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピントロニクスでは、省電力スピン制御の新原理の開拓が盛んに進められている。特にスピン流生成は、物性物理における最も大きなテーマの1つとして盛んに研究されている。実際にこれまでスピンホール効果、スピンゼーベック効果、スピンガルバニック効果など、電気、熱、光を用いた様々な方法でスピン流生成は実証されてきた。 本研究では、高強度テラヘルツ光を用いることによって高効率スピン流生成の新原理構築を目指す。テラヘルツ領域はドルーデ応答や磁気共鳴などの多彩な応答が存在する上に、光学実験の特長を活かし、超高速応答やスピン偏極方向などの詳細な知見が得られることが期待できる。 今年度は、ラシュババンドを持つ系において電場の2次に比例するスピン流生成の観測を目指し、まずは1次の効果として知られるラシュバエデルシュタイン効果の観測を行った。巨大なラシュバ分裂を示す物質として知られるBiTeBrにおいて、電流印加時におけるカー回転測定を行った。その結果、印加電流とは垂直な方向のみにスピン生成が生じることがわかった。これは、ラシュバエデルシュタイン効果によって期待される振る舞いと完全に合致している。また、1次の効果が大きいほど2次の効果が大きくなると期待できるため、より大きなエデルシュタイン効果を示す物質を開拓を行った。その結果、Teにおいてやはりエデルシュタイン効果を観測することができた。 さらに、メインの測定系である高強度テラヘルツ発生に関して、光学系の改善を行うことで発生可能な電場は去年度よりも向上させることに成功している。これは、電流印加により発生できるものよりもはるかに大きく、2次の効果の測定が有利に進められるはずである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新奇なスピン流生成方法の開拓を目指した研究であり、その一つとしてラシュバ系における非線形スピン流の観測を行う予定である。この効果は電場に関して2次の効果であるが、本年度では電流に1次の効果であるラシュバエデルシュタイン効果の観測を精力的に行い、2次の効果の観測に最適な物質の探索を行った。そうした中で効率よくスピン生成できる物質を発見したのに加え、ラシュバエデルシュタイン効果自体の研究としても新たな発見があり、そういった展開も面白いと考えている。同時に、スピン流検出手段としてカー効果を用いる予定であったが、そうした手法のノウハウの蓄積も行うことができた。 また、高次効果を狙うためには高電場を印加することが必要であるが、そのための高強度テラヘルツ光発生システムの構築も着々と進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、カー効果と高強度テラヘルツ光は別々に組み上げているため、非線形スピン流観測のためには両者を同時に組む必要が今後必要である。すでに、それらに必要な物品に関しては購入済みであり、すぐに取り掛かる予定である。 また本研究では、もう一つのテーマとしてテラヘルツ光によるスピン波スピン流の観測も目指していたが、予想以上にラシュバエデルシュタイン効果の研究が予想以上に進捗しているため、この効果についてより深く調べていく。これによって、非線形スピン流生成観測のテーマとも相補的な知見が得られるために、より潤滑な研究推進が期待できる。
|