2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high-efficiency photoelectrode for solar water splitting utilizing ferroelectric polarization
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17H06608
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 拓紀 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 研究員 (10792517)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | パルスレーザー堆積法 / スズ酸化物 / 光電極 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はSn2TiO4の光電極材料としての可能性を検証するため,パルスレーザー堆積(PLD)法によるSn2TiO4薄膜の製膜条件探索を行った.ターゲットにはSnO2-TiO2固溶体(SnxTi1-xO2)焼結体を使用した.まずSiO2基板上にターゲット中Sn濃度xおよび製膜時基板温度Tsを変化させた薄膜を作製し,それらの組成を蛍光X線測定により分析し化学両論組成の薄膜が得られる条件を探索した.その結果,x = 0.5,Ts = 300℃,酸素圧PO2 = 4 mTorrの条件において化学両論組成に近いアモルファスSn2TiO4薄膜が得られた.得られたアモルファス薄膜を,PLDチャンバー内でアニールすることで結晶性のSn2TiO4を得ることに成功した.上記の条件をもとに,Nb-doped SrTiO3(100)単結晶基板上にSn2TiO4薄膜を製膜し,擬似太陽光照射下,0.5M Na2SO4水溶液中で光電気化学特性評価を行った.標準水素電極電位に対し1.2Vにおける電流密度は約30 μA/cm2であり低い活性に止まったが, PLD法によりSn2TiO4薄膜を作製し,その光触媒活性を明らかにした報告はこれまでになく,この点は大きな成果と考えている 低活性の原因として低い結晶性が考えられるが,より高温でのアニールではSn2TiO4が分解したため結晶性の更なる向上は困難と判断し,より安定性が高いSnNb2O6に対象材料を変更した.SnNb2O6薄膜の製膜においては,SnO2およびNb2O5ターゲットを用い,それらを交互にアブレーションすることで薄膜を作製した.Ts = 650℃で製膜した試料において,X線回折測定およびラマン分光測定から結晶性のSnNb2O6が成長していることが確認され,SnNb2O6が高温で安定的に製膜可能な材料であることを示す結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Sn2TiO4は不安定な物質であるため,高温での製膜ではSn2TiO4に比べより安定なルチル相が生成してしまうことが,本研究の過程で明らかとなった.材料の不安定さのためSn2TiO4の製膜は非常に困難であったが,組成を精密に制御したアモルファス薄膜をアニールすることによって多結晶のSn2TiO4薄膜の合成に成功した.一方,本研究ではSn2TiO4のエピタキシャル成長を目的とし,Nb-doped TiO2やNb-doped SrTiO3単結晶基板上での製膜成長を試みたが,アモルファス薄膜をアニールにより結晶化させる手法では,当初期待していたエピタキシャル成長には至らなかったことから,進捗はやや遅れていると評価した. 年度の途中からSn2TiO4に代わる材料としてSnNb2O6のPLD法による製膜に着手した.SnNb2O6はSn2TiO4と同様にSn2+を含有する物質であるが,Sn2TiO4よりも熱的安定性が高く,高温での製膜でも安定的に堆積可能であるという結果が当該年度の研究により得られた.強誘電体層の導入による電荷分離の促進効果を検証するに当たっては,半導体層に十分に結晶性の高い材料を用いることが望ましく,SnNb2O6の多結晶薄膜が本年度内に得られたことは今後の研究にとってポジティブな結果であると捉えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,SnNb2O6は比較的安定な材料であり,当初主な研究対象としていたSn2TiO4に比べ結晶性の高い薄膜が得やすいことを明らかにした.今後は半導体層に用いる材料としてSnNb2O6に対象を絞り,製膜条件の最適化に取り組む.基板にはITO基板およびNb-doped SrTiO3基板を候補として検討する. X線回折法およびラマン分光法により結晶性や生成相の解析を行い,最適な基板温度,雰囲気酸素圧,各ターゲット(SnO2およびNb2O5)のアブレーション回数等の製膜パラメータを探索し,より結晶性が高く不純物相の無いSnNb2O6薄膜の製膜を目指す. 半導体層として用いるSnNb2O6薄膜の作製と並行して,BaTiO3強誘電体層の製膜にも取り組む.製膜条件検討初期段階ではBaTiO3薄膜単独で製膜を行う.作製したBaTiO3薄膜はX線回折法により生成相の同定および結晶性,配向性の評価を行い,結晶性の良い単相のBaTiO3薄膜が得られる条件を明らかにする.BaTiO3の成長を確認した後,SnNb2O6/BaTiO3の積層薄膜の作製に取り組む.BaTiO3層は電荷分離を促進することが期待できる一方,電子伝導の抵抗となる可能性もあることから,BaTiO3層の膜厚は2 nm~20 nm程度に抑えることを予定している.本年度では最終的にSnNb2O6/BaTiO3積層薄膜の光電流特性のBaTiO3層膜厚に対する依存性を評価し,強誘電体層の導入が光触媒活性に及ぼす効果を明らかにすることを目指す.
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