2017 Fiscal Year Annual Research Report
A practical application of accurate non-gravitational disturbance model with pre-computed tensor method
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17H06615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十里 哲 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00802977)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 非重力外乱 / 太陽輻射圧 / 熱輻射圧 / 空力外乱 / 姿勢解析 / 精密軌道決定 / 準天頂衛星 / PROCYON |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で目指す「高精度かつ実用的な非重力外乱計算手法」を構築するため,本年度は,(A)提案手法の拡張と(B-1)深宇宙探査機PROCYONの姿勢運動解析を行った. (A)としてまず,提案手法を空力外乱計算へ拡張し,新たな計算手法を導いた.この手法により,空力外乱を太陽輻射圧外乱と同じ事前計算形状テンソルを用いて精密・高速に計算できることを示し,提案手法の拡張性の高さを示した.第61回宇宙科学技術連合講演会にて本結果を発表し,申請者は若手奨励賞を受賞した.さらに,熱輻射圧計算やプロトン粒子衝突による外乱計算への拡張手法も同様に検討し,この結果は2018年度に報告予定である. (B-1)として,提案手法を用いた精密な太陽輻射圧計算を行い,それを利用した姿勢運動シミュレータを構築した.シミュレーション結果とPROCYONの軌道上データを比較し,提案手法の妥当性を検証した.また,光学特性の不確定性を補正するため,軌道上データを用いた光学特性推定器を構築した.その結果,光学特性を補正することで,シミュレーション結果と軌道上結果が一致することが確認された.しかし,推定された光学特性が想定値からずれており,詳細な検証が必要だと分かった.また,この解析からPROCYONは時折,太陽輻射圧では説明のできない姿勢運動をしていることも明らかとなった.これらの原因として,熱輻射圧計算の更なる高精度化の必要性,これまで無視されていたより小さな非重力外乱の影響などが考えられるため,今後さらに研究を深める予定である.これら(B-1)に関する研究は,31st ISTSや第14回宇宙環境シンポジウムにて研究発表を行った. さらに,当初の計画から前倒しで,(B-2)準天頂衛星のcm級精密軌道決定実験のための初期解析も行った.この初期解析を基に,熱輻射圧モデルを微修正し2018年度に本格的な解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね,当初の予定通りのスケジュールで進んでいる.しかし,当初今年度に行う予定であった,衛星形状の不確定性に対応可能な計算手法については,定式化に時間を有しており,今年度完了させることができなかった.一方,2018年度に行う予定であった(B-2)準天頂衛星のcm級精密軌道決定について,今年度の段階で初期解析を行うことができたので,この点では予定を前倒して進めることができている.よって2018年度には,(B-2)の前倒しによって生まれた時間余裕を用いて,衛星形状の不確定性への対応手法について継続して検討を進める予定である. また,今年度は国際・国内学会で積極的な研究発表を行い,一定の評価を得たものの,学術雑誌への論文投稿を行うことができなかった.2018年度は学術雑誌への論文投稿に力を入れていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は,2017年度の研究結果をもとに,準天頂衛星のcm級精密軌道決定実験を1年間以上のデータを用いて本格的に行う.その軌道決定結果を従来手法で得られる結果と比較・解析し,提案手法の有効性の確認とさらなるモデル改善を目指す. また,昨年度実施したBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)の測定結果から,反射率の入射角依存性を考慮する必要があることが分かってきたため,その効果を実用的な計算コストで表現するためのモデル化を行い,それもモデル改善イタレーションに組み込み評価を行う.このイタレーションに合わせて,2017年度に実施できなかった衛星形状の不確定性に対応可能な計算手法についても研究を進める. さらに上記の,非重力外乱の高精度モデル化及び,提案手法を用いた準天頂衛星のcm級精密軌道決定実験結果をまとめ,学会誌への論文投稿や国内・国際学会での研究発表を行い,広く成果を発表する予定である. これらの成果発表の過程で,測位衛星の精密軌道決定分野に力を入れている欧州の研究者と意見交換などを行うことも計画している.この意見交換により,欧州の研究者から最新の軌道決定システムについて学ぶだけでなく,提案手法を積極的にアピールし,幅広く使われる手法へと発展させて行くことを目指す.
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Remarks |
申請者五十里哲は,第61回宇宙科学技術連合講演会で講演した「事前計算形状テンソルを用いた表面外乱の高精度高速計算手法」に対して,第61回宇宙科学技術連合講演会若手奨励賞優秀論文を受賞した(2017年12月27日)
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Research Products
(5 results)