2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規イオンチャネル作用分子の創製を志向したジテルペンアルカロイド類の網羅的全合成
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17H06621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 浩一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (20804371)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 有機化学 / 天然物合成 / ジテルペンアルカロイド / イオンチャネル作用分子 / ラジカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、鍵反応として設定したラジカル反応における、橋頭位ラジカル発生源として、カルボン酸を用いる検討を行った。第三級アミンを有する基質を用いたところ、カルボン酸から直接ラジカルを発生させることはできなかった。これは、反応条件下、第三級アミンが酸化されてしまったためであると考えられる。一方、アミンをBoc基で保護した基質を用いたところ、光触媒を用いる条件で橋頭位ラジカルを発生でき、B環に相当する7員環形成が進行することが分かった。以上により、アミンを電子求引基で保護した基質に対して、カルボン酸からの橋頭位ラジカルの直接的な発生法を確立できた。 続いて、プベルリンCのラセミ全合成に向け、連続ラジカル環化の基質合成を試みた。すでに合成法を確立しているラセミ体のAE環ユニットに対し、アセタール部位を有するアルキンユニットを導入した。その後、イノンへと誘導し、スタニル基を1,4-付加させることで、ラジカル環化に重要な炭素鎖がトランスの関係にあるビニルスズを合成した。得られたビニルスズに対し、C環ユニットを導入することで環化前駆体を合成できる。 また、プベルリンCやタラチサミンをはじめとしたC19ジテルペンアルカロイドの不斉全合成に必要な光学的に純粋なAE環の合成を行った。AE環骨格を有するジオールに対し、酵素を用いた光学分割および再結晶操作を行うことで、光学的に純粋なAE環ユニットを合成することができた。本反応はグラムスケールで行うことができ、大量合成が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鍵反応として設定したラジカル反応における、橋頭位ラジカル発生源として、カルボン酸を用いる検討を行い、最適な反応条件を見出した。さらに、合成法を確立しているラセミ体のAE環に対し、炭素鎖を導入し、ラジカル環化に重要な炭素鎖がトランスの関係にあるビニルスズを合成した。得られたビニルスズに対し、C環ユニットを導入することで環化前駆体を合成できる。得られた環化前駆体に対し、最適化したラジカル反応条件を適用することで、5環性骨格の構築が可能になると考えられる。 また、AE環ユニットの不斉化にも成功した。この結果、ラセミ体を用いて合成経路を確立した後、迅速に不斉全合成を達成できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、モデル研究により確立した骨格構築法を最大限利用し、プベルリンCの不斉全合成を行う。昨年度確立したAE環ユニットの光学分割により、光学的に純粋なAE環ユニットを大量合成する。得られたAE環に対し、C環を含む炭素鎖伸長を行うことで、ラジカル前駆体であるカルボン酸へと導く。カルボン酸から橋頭位ラジカルを発生させることで、連続環化を進行させ、5環性化合物へと導く。カルボン酸を用いたラジカル反応が進行しない場合には、モデル研究と同様にC11位に臭素原子を導入し、ラジカルを発生させ、連続環化を行う。続いて、モデル研究で確立した手法に従い、向山アルドール反応により、6環性骨格を構築する。最後に、立体選択的な酸素官能基変換を行い、プベルリンCの不斉全合成を達成する。 続いて、プベルリンCの骨格からタラチサミンの骨格構築を行い、タラチサミンの全合成を行う。プベルリンC骨格を有する化合物のC7位にキサンテートを導入する。この化合物を光条件に付しラジカルを発生させる。F環をラジカル的に開環させた後、生じたラジカルが二重結合に付加することでタラチサミンの骨格を構築できると予想した。最後に、酸素官能基の変換を行い、タラチサミンの全合成を達成する。 タラチサミンの骨格構築法を確立した後は、非天然型を含むジテルペンアルカロイド類の網羅的な全合成を行う。全合成中間体に対し、酸素官能基の導入・修飾および除去を行うことで、多様なジテルペンアルカロイドの全合成が可能となる。これらを用いて、イオンチャネル作用を調査し、活性の強さおよびチャネルに対する特異性に必要な構造要件を明らかにする。
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Research Products
(8 results)