2017 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞をターゲットとしたリガンド搭載シスプラチンミセルの開発
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17H06641
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮野 一樹 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (50801213)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ナノバイオ / ドラックデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ節転移を有する舌癌(SAS-L1-Luc)モデルマウスにおける、薬剤投与後の血中及び腫瘍組織内のPt量の定量により、シスプラチン(CDDP)、シスプラチンミセル(CDDP/m)、cRGD搭載シスプラチンミセル(cRGD-CDDP/m)の血中滞留性及び腫瘍組織集積性を評価した。cRGD-CDDP/m(半減期(T1/2):5.0時間)とCDDP/m(T1/2: 5.5時間)両者の血中滞留性は、CDDPの血中滞留性と比較しはるかに優れていた。同所舌腫瘍においては、cRGD-CDDP/mはCDDP/mに比し薬剤投与早期より優れた腫瘍集積性を示し、薬剤投与後1時間では同所腫瘍組織1gあたりにcRGD-CDDP/m投与量の3%程度が腫瘍内に集積しており、薬剤投与後24時間においてもそれを維持していた。一方でCDDP/mは、徐々に同所舌腫瘍へと集積した結果、薬剤投与後24時間においてcRGD-CDDP/mと同等の腫瘍集積性を認めた。転移リンパ節においては、薬剤投与後1時間でcRGD-CDDP/mはCDDP/mに比し転移リンパ節への集積性が顕著に優れており、薬剤投与後8時間では、cRGD-CDDP/mの転移リンパ節への集積性の低下が生じる一方で、CDDP/mは徐々に転移リンパ節に集積し、薬剤投与後24時間では、cRGD-CDDP/mとCDDP/mの集積性の差はわずかに留まっていた。 以上の実験結果より、cRGD-CDDP/mとCDDP/mのミセル製剤は、CDDPと比較し顕著に優れた血中滞留性及び腫瘍組織集積性を示しており、特に薬剤投与早期においては、cRGD-CDDP/mの同所舌腫瘍、転移リンパ節への集積性がCDDP/mに比し優れており、CDDP/mへと搭載したcRGDのリガンド効果と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
薬剤投与早期における顕著な血中滞留性と腫瘍組織集積性が、cRGD搭載シスプラチンミセル(cRGD-CDDP/m)の最大の特徴である事がこれまでの実験において判明しており、特にインテグリン(αvβ3、αvβ5など)発現量の多い癌種、組織(転移リンパ節など)を主に実験対象とする事で、これまでの計画以上に実験が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
cRGD搭載シスプラチンミセル(cRGD-CDDP/m)は、転移リンパ節への集積性に優れており、同部位に対する劇的な抗腫瘍効果を期待できる薬剤である事が、これまでの実験結果から明らかとなった。これまで、頭頸部扁平上皮癌モデルマウス(リンパ節転移を有する舌癌モデルマウス)を用いた薬剤腫瘍集積性、抗腫瘍効果の検証を施行してきたが、今後はこの腫瘍組織におけるインテグリン(αvβ3、αvβ5など)発現を病理組織学的免疫染色により解析し、抗腫瘍効果との相関を検証していく事とする。また、臨床現場において化学療法が奏功しにくい頭頸部領域の希少癌(耳下腺癌、顎下腺癌など)の腫瘍組織についてもインテグリンの発現解析を施行し、耳下腺癌、顎下腺癌治療におけるcRGD-CDDP/mの有用性についても検証していく事とする。
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Research Products
(4 results)