2017 Fiscal Year Annual Research Report
AKAPs-PKA 結合阻害剤の腎性尿崩症治療薬への応用
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17H06656
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安藤 史顕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80804559)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 先天性腎性尿崩症 / AKAPs / PKA / AQP2水チャネル / AKAPs-PKA結合阻害剤 / 低分子化合物 / 誘導体展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性腎性尿崩症は抗利尿ホルモンであるバゾプレシンの受容体に機能喪失型変異があることから、尿濃縮力が破綻し多尿となる疾患である。尿濃縮にはcAMP/PKA/AQP2水チャネル シグナルの活性化が必要であり、従来はcAMP活性化が先天性腎性尿崩症の治療戦略とされてきたが根治的治療法の開発には至っていない。そこで、我々はPKAの直接活性化に着目した。 PKAの細胞内局在と活性はアンカータンパクであるAKAPsに規定されている。PKAとAKAPsの結合を阻害する低分子化合物FMP-API-1の効果を、AQP2を内因性に発現する皮質集合管培養細胞を用いて検証した。Phospho-PKA Substrate抗体を用いて、細胞内のPKA活性を評価したところ、FMP-API-1は一部のPKA Substratesを有意にリン酸化していた。そこで、FMP-API-1のPKA活性化効果がAQP2の活性化に関わるかを検証した。 ①AQP2のリン酸化:皮質集合管培養細胞においてFMP-API-1はバゾプレシンと同様にS261を脱リン酸化しS269をリン酸化した。②AQP2の膜輸送:リン酸化されたAQP2が細胞質から尿細管腔側膜へと輸送されることを免疫染色・ビオチン標識を用いて確認した。③AQP2の水透過性:マウス腎臓から皮質集合管を単離し、両端をガラスピペットでカニュレーションし灌流実験を行った。FMP-API-1は、バゾプレシンと同程度に集合管の水透過性を上昇させた。④生体内の活性:バゾプレシン2型受容体の阻害剤トルバプタンを使用した腎性尿崩症モデルマウスにFMP-API-1を投与したところ尿濃縮力の上昇と尿量・飲水量の低下を認めた。 以上の結果は、AKAPs-PKA結合阻害剤によるPKAの直接活性化が先天性腎性尿崩症の治療戦略として有用であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FMP-API-1は、腎臓集合管においてPKA/AQP2活性化効果を持ち、先天性腎性尿崩症の治療薬としての効果が期待されるが、水溶性が低いことから十分なバイオアベイラビリティを得られていない可能性がある。FMP-API-1の誘導体の中には、FMP-API-1より強力なAKAPs-PKA結合阻害作用を持つ化合物があることが報告されており、その効果を検証した。 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 薬学分野と共同研究を行い、FMP-API-1/27を作成した。FMP-API-1/27は、集合管培養細胞においてFMP-API-1の約1/10の濃度でFMP-API-1と同等の効果を発揮した。そこで、FMP-API-1/27をwild typeマウスに腹腔内投与したところ、バゾプレシンよりも強力にAQP2をリン酸化した。FMP-API-1/27は、皮下投与において6時間以上のAQP2リン酸化効果を持ち、夜間頻尿の軽減に有効であると考えられた。さらに、FMP-API-1/27は腎臓集合管に特異的なPKA活性化効果を持ち、心臓や腎臓全体のPKA活性を変動させないことから副作用を軽減できると考えられた。FMP-API-1/27は腎性尿崩症モデルマウスにおいても有効であり、尿浸透圧を上昇させた。 FMP-API-1は、先天性腎性尿崩症の治療に有望なリード化合物であり、FMP-API-1を誘導体展開することが新たな先天性腎性尿崩症の治療戦略になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、現在さらにFMP-API-1の誘導体展開を進め、より強力なPKA/AQP2活性化効果を持つ化合物を探索している。FMP-API-1は経口投与では効果が無いことから、将来的には経口投与に有利な化合物の開発も視野に入れる。
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