2017 Fiscal Year Annual Research Report
眼内悪性リンパ腫のラマン散乱光解析による新規診断法開発
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17H06660
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岩崎 優子 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (10801516)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 眼科 / 細胞-組織 / 癌 / 臨床 / ラマン散乱光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、悪性リンパ腫セルラインの固定サンプルを用いて、ラマン散乱光測定の条件を決定した。 まず、東京近郊の三つの施設においてラマン顕微鏡で観察を行い、光学顕微鏡で最も明瞭に細胞を観察できた顕微鏡として、物質・材料研究機構 (NIMS) 分子・物質合成プラットフォームのラマン顕微鏡を使用することとした。 また、一つの細胞の中のどこでラマン散乱光を評価するかを定義するために、以下のデータを採取した。光学顕微鏡にて細胞の核が観察されるXY位置において、細胞の下方から上方にかけて1um刻みでZ位置を変えながらラマン散乱光を測定した。得られたデータは、主成分分析・線形判別分析を行うことで、下方からの測定結果、中間部からの測定結果、上方からの測定結果に分けられることが確認できた。下方からの測定結果をdish由来、中間部からの測定結果を細胞由来、上方からの測定結果を懸濁液由来と解釈できると考えた。このため以後、XY方向における1点らのラマン散乱光のデータとしては、Z方向に多量の測定を行い、主成分分析・線形判別分析を行うことで細胞由来と考えられる複数のデータの平均値を採用することと決めた。 細胞からのラマン散乱光を測定するうえで、細胞の懸濁液とdishの素材の及ぼす影響について、複数の条件設定を行い、最も影響の少ない条件を採用した。 また、悪性リンパ腫セルラインの生細胞を本学から観察施設まで運搬し、同様に測定できることを確認した。以上の実験から、本年度は使用する顕微鏡、懸濁液とdishの素材、細胞の撮影方法を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラマン散乱光測定に用いる顕微鏡の決定に時間を要したため、当初の予定よりも遅れが生じている。
具体的には、外部に使用の開かれている施設のなかで、東京医科歯科大学から近い順に訪問した。電気通信大学、早稲田大学のラマン顕微鏡の光学顕微鏡では細胞が明瞭に観察できなかった。NIMSのラマン顕微鏡は100倍の水浸レンズを備えており、明瞭に細胞を観察できることが確認された。以後の予定は、遅滞なく進められる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
①正常ヒトの血球の分離:正常ヒト由来の末梢血単核球からMACSにてT細胞、B細胞を分離する。②種々の培養環境下にて培養する:①で得た細胞、および悪性リンパ腫セルラインを、FBSを含むRPMI1640培地を用いた維持環境、もしくは炎症模擬処置(抗CD3・抗CD28抗体刺激、形質細胞への分化誘導条件)下にて培養する。③ラマン散乱光測定:培養条件にかかわらず悪性細胞の鑑別が1細胞レベルで可能な観測条件(照射レーザー波長、測定箇所やラマンシフトなど)を検討する。ラマン散乱光の解析には、主成分分析・線形判別分析を用いる。④サンプルの固定包埋による影響を評価:③が可能であった場合、細胞が固定・包埋されていても同様に鑑別が可能であるかを評価する。①、②で得られる細胞をホルマリン固定、パラフィン包埋し、ラマン散乱光を解析する。⑤④において、鑑別が可能と評価された場合には、臨床サンプルを用いて、ラマン散乱光解析の有用性を検討する:本学眼科学教室にて硝子体生検を行い、悪性リンパ腫ないし良性の炎症性疾患と診断された患者サンプルを解析する。サンプルはホルマリン固定・パラフィン包埋されたものである。サンプル中の炎症性細胞と悪性リンパ腫細胞のラマン散乱光を測定し、③④同様に鑑別が可能であるかを検討する。
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