2017 Fiscal Year Annual Research Report
高等学校次期学習指導要領における地理歴史科新設予定科目「歴史総合」の教材開発
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17H06668
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
日高 智彦 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (60803921)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史総合 / 歴史教育 / 社会科教育 / 世界史教育 / 世界史 |
Outline of Annual Research Achievements |
高校の新学習指導要領は、案の公示が平成30年2月14日、告示が3月30日と年度末であったため、今年度は研究実施計画どおり、(1)これまでの理論的・実践的研究成果の収集と分析、(2)中教審答申(平成28年12月)から「歴史総合」の形を予想しながら、(1)の分析成果を援用して「歴史総合」の方向性を明らかにする、という形で研究を進めた。 成果として具体的なものは、日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会高校歴史教育に関する分科会主催の歴史教育シンポジウム「歴史総合」をめぐって(2)―中学校と高校の歴史教育を考える―(駒澤大学駒沢キャンパス、平成29年10月28日)において、「世界史論・世界史教育論の成果と課題から高校歴史新科目を考える」のタイトルで行った研究報告である。ここでは、特に世界史教育に関わる先行研究の成果に基づきながら、「歴史総合」後に履修可能となる新選択科目「世界史探究」の具体的カリキュラム案を提案した。新学習指導要領では、現行の「世界史」と「日本史」の2本立ての高校歴史科目が必修科目「歴史総合」として統合されるが、「歴史総合」履修後の新選択科目は「世界史探究」「日本史探究」と2本立てが維持される。よって、現行「世界史」と「世界史探究」のちがいを歴史教育に関する理論的・実践的研究に学びながら構想することで、その間にある「歴史総合」が目指すべき方向性を明らかにした。「世界史探究」の具体的カリキュラム案としても管見では初の提案であり、報告をもとに作成した論文は『日本歴史学協会年報』33号に掲載予定である。 また、進めていた研究に基づいて、新学習指導要領案が公示されてからすぐに、「歴史総合」の教科書作成や実践的課題に関する課題を分析し、提案する論文を作成した。これは『歴史評論』2018年(平成30年)7月号に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度研究実施計画に示した、(1)これまでの高校歴史科目である「世界史」と「日本史」のカリキュラムを、過去の学習指導要領、教科書構成、実践例や理論研究を収集して分析する、(2)中教審答申(平成29年12月)に示された「歴史総合」の構成を分析する、(3)「歴史総合」カリキュラム案を具体的に構築する、の3項目については、それぞれ研究を進めてきた。 (1)・(2)に関しては、順調に研究をすすめることが出来ている。ここから、「歴史総合」の重要な意義である「世界史と日本史の統合」に関して、しかし「歴史総合」後の選択科目が「世界史探究」「日本史探究」と統合されないことに着目し、高校歴史教育における「世界史と日本史の統合」の目標・内容・方法について、現行「世界史」と「世界史探究」のちがいに着目しながら考える、という新しい視点を獲得することが出来た。この点については、平成29年度中に具体化した研究成果にも反映できた。 しかし、(3)についてはまだ具体化できていないだけでなく、今後慎重に研究を進める必要が生じた。なぜなら、平成30年3月30日に告示された新学習指導要領の「歴史総合」の内容・方法に関する記述は、中教審答申段階からは想定できなかった、実践的課題にかかわる重要な論点を示していたため、これまで進めてきた(3)の研究では不十分であることが判明したからである。ただし、このことは研究実施計画作成時点で予想していたことであったため、何が不十分で、何がこれまでの研究で対応可能かも、現時点でおおよそ明らかにできている。 以上の理由から、本研究については、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「歴史総合」のカリキュラムと、これを構成する教材、授業案、評価方法を具体化するために、(1)高校新学習指導要領(平成30年3月)の「歴史総合」を分析する、(2)新学習指導要領における高校歴史科目の構成原理の変化を理解するために、他教科・他科目や教育方法学において蓄積されてきた理論的・実践的研究成果を収集・分析する、(3)「歴史総合」において重視されている各種の歴史資料の収集と教材化、の3項目について研究を推進する。 (1)については、平成29年度の研究実績を援用しながら進めていくが、そこから浮かび上がった課題が(2)である。新学習指導要領の高校歴史科目は、科目の構成原理が従来とは大きく異なり、学習内容ではなく「総合」「探究」といった学習方法で構成されている。これは他教科・他科目にも貫かれている今次改訂の特徴であり、1960年代以来の探究学習や範例方式や仮説実験授業をふまえた教育方法学の知見に基づいている。よって、「歴史総合」の構想にはこれらの研究成果を踏まえることが不可欠と考えられる。そのことによって、(3)の「歴史総合」における歴史資料の収集・教材化の視点を確立したい。これまでの日本の歴史教育においては、歴史資料を用いた探究学習が一般的には行われてきておらず、「歴史総合」ではどのような歴史資料教材として用いてどのような授業を構想すればいいか、現場は大きな不安を抱えている。この点についての具体的な提案は、「歴史総合」の実践と歴史教育の改善に大きく資することになるだろう。 以上の3項目のステップを経て、最終的には、年間計画、単元構成、1時間の授業と、さまざまなレベルでの「歴史総合」の具体案を開発していく。
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Research Products
(4 results)