2017 Fiscal Year Annual Research Report
現代共同体論ーエティエンヌ・バリバールを中心とするフランス語圏思想
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17H06682
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
太田 悠介 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師 (70793074)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | エティエンヌ・バリバール / 共同体 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では現代フランス語圏の思想を対象とし、これを共同体論の解明という観点から考察することを目的としている。本年度は研究課題に関連する文献・資料の収集と読解をまず進めた。そのうえで、その過程で重要と思われた個別の論点を雑誌論文および翻訳というかたちで発表した。 第一に、研究課題の中心的な考察の対象である現代フランスの哲学者エティエンヌ・バリバールの共同体論に関する雑誌論文を発表した。一昨年度の台湾国立交通大学での口頭発表をもとにした本稿では、バリバールの共同体論について、近年重要な位置を占めつつあるヨーロッパ概念との関連から考察した。第二に、フランスの移民現象を専門とする歴史家ジェラール・ノワリエルの近年の仕事をまとめた講演の翻訳である。現代フランス語圏の共同体論においては、現代の移民社会フランスの実相がひとつの背景をなしていると考えられ、そうした観点からこの翻訳に取り組んだ。共同体において歴史の語りがはたす役割、知識人層と民衆層の接点、笑いと特に諷刺がもつ共同性とその外部など、共同体をめぐる多岐にわたる論点を具体的に確認することができた。 以上のように、本年度は研究課題である現代フランス語圏の共同体論について、そのサブテーマにあたるヨーロッパ論(バリバール)と移民社会論(ノワリエル)を検討した。今後の展開としては、こうした個別の論点を研究課題の主題により密接に結びつけて考察してゆくことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では年度の後半にフランスでの資料調査を計画していたが、所属機関の変更などの諸事情からこれをとりやめた。その結果、現地でのあらたな資料の収集はできなかったが、すでに手元にあった基本的な文献の考察を進めることでこれに代えた。そのため、当初の計画からは一部変更があったものの、平成30年度以降の作業を一部先取りして進めたことなどを考慮し、以上の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度に当たる平成30年度は、平成29年度に検討した個別の論点を研究課題の主題のもとであらためて整理すること、そして相互をより密接に関連づけることを重点的に行うことを予定している。そのうえで本研究課題の最終的な成果のまとめを行う見通しである。
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Remarks |
(翻訳) 1. 著者名:ジェラール・ノワリエル(太田悠介訳) 2.タイトル:「社会における歴史の役割」 3. 雑誌名:『日仏文化』 4. 巻:87 5. 発行年:2018年 6. 最初と最後の頁:32-37 査読の有無:無 雑誌論文のDOI:なし オープンアクセスではない
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