2017 Fiscal Year Annual Research Report
巨大圧電性希土類AlN膜の配向制御と次世代高周波弾性表面波フィルタへの応用
Project/Area Number |
17H06721
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 雅視 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60763852)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 弾性表面波 / ScAlN薄膜 / イオンビーム / 周波数フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,次世代高周波弾性表面波フィルタに向け,ScAlN薄膜/圧電基板を用いた縦型漏洩弾性表面波(LLSAW)デバイスを目指す。LLSAWデバイスは他のSAWモードに比べ位相速度および結合係数が高く,次世代移動体通信に必要な高周波動作の周波数フィルタとして有望である。しかし,従来SAWデバイスの圧電基板のみの構造では,伝搬減衰が大きいため急峻なフィルタ特性が得られないことが問題であった。そこで,高音速かつ高圧電性をもつScAlN薄膜を圧電基板上に装荷することで,高位相速度,高結合係数,低伝搬減衰が両立するLLSAWデバイス実現できると考えた。本年度は以下の研究成果が得られた。 ・LLSAW伝搬特性理論計算によるScAlN膜の膜厚,c軸方向の最適化 ScAlN膜をXカット36°Y伝搬LiNbO3に装荷した時のLLSAW伝搬特性を理論解析し,ScAlN膜の最適化を行った。ScAlN膜の自己配向方向であるc軸垂直膜を装荷した場合,ゼロ減衰となったが,結合係数が著しく低下した。c軸が基板に対して平行かつLLSAW伝搬方向に平行な場合は,結合係数が単結晶の約1.5倍となったが,伝搬減衰の減少は得られなかった。それに対して,c軸が基板に対して平行かつLLSAW伝搬方向に垂直な場合はゼロ伝搬減衰とともに,結合係数が約6%とフィルタ応用に十分な値が得られることが分かった。以上の理論計算の結果から,c軸平行ScAlN膜装荷が必要となる。 ・ScAlN薄膜成膜装置の構築 ScAlN膜の配向制御を成膜中のイオンビーム照射により実現し,c軸平行ScAlN膜/圧電基板構造の形成を目指す。まず成膜装置用真空チャンバーの設計,作製を行った。本装置によるc軸垂直ScAlN膜の形成,報告されている圧電性の増幅も確認できた。また,イオンビーム照射のためのECRイオンガンの成膜装置への組み込みも完了している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,理論計算によるLLSAWデバイスに最適なScAlN膜/圧電基板の設計を達成した。デバイス作製に向けては,イオンビームアシスト成膜装置の構築を完了し,c軸垂直ScAlN膜の形成にも成功した。以上の結果から,おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き, LLSAWデバイスの最適構造について理論計算により検討し,特に圧電基板の最適化(材料,カット角等)を行う。並行して,デバイス作製に関してはイオンビーム照射によるScAlN膜の配向性制御を実現し,c軸平行ScAlN膜を圧電基板上への成膜を試みる。さらに形成した層状基板構造を用いたLLSAWデバイスを作製,周波数特性の評価を行う。その結果と従来の圧電基板のみLLSAWデバイスとの比較を行い,優位性を明らかにする。
|
Research Products
(5 results)