2017 Fiscal Year Annual Research Report
先駆的ナノ・マイクロ構造解析による冷凍野菜の食感劣化機構の解明
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17H06727
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
今泉 鉄平 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (30806352)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ブランチング / 冷凍野菜 / 食感 / 原子間力顕微鏡 / インピーダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのブランチングに関する研究においても品質変化、とりわけテクスチャの変化は重要視されてきたが、そのメカニズムを根本的に解明しようといった研究は多くない。これは、加工に伴う構造の変化が複雑で把握し難く、特にナノ・マイクロレベルの評価は極めて困難だからである。本年度は冷凍野菜の一般的な前処理であるブランチング時の条件が、食感に及ぼす影響について重点的に解明を試みた。ブランチング時間に伴う食感の変化をクリープメータによって測定し、経時的な変化が指数モデルで表されることを示した。これは、低温ブランチングを行なった試料でも同様に見られた。また、無処理および低温ブランチングした試料の軟化現象はいずれもアレニウス型の温度依存性を示した。この際に得られた活性化エネルギーは処理の有無に限らずほぼ同一の値であった一方で、頻度因子には大きな差異が見られた。このことから、細胞間のペクチンネットワーク自体の強度に大きな差はなく、形成量の違いが硬さの差となって現れた可能性が考えられた。この他に、ブランチングにおける膜構造変化をインピーダンス計測によって評価した。各条件で処理した試料から得られたインピーダンスデータに対して等価回路解析を行い、細胞内抵抗、細胞膜容量、細胞外抵抗といったパラメータを決定した。ここから、膜構造と処理温度、処理時間の関係を明らかにした。また、マイクロX線CTや原子間力顕微鏡による組織構造評価の可能性を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は冷凍野菜製造工程の中で特に、ブランチング工程での調査を重点的に行なった。これは当初の予定通りである。組織構造解析、とりわけ原子間力顕微鏡でのペクチン構造観察においては、観察条件の決定にさらなる試行錯誤が必要である。その一方で、食感変化の速度論的解析では当初の予定を上回る知見を得た。総合的に見ると、概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は特に凍結過程における食感変化メカニズム解明を目指す。青果物はそのまま凍結した場合には著しい食感劣化が引き起こされる。ブランチングは、材料野菜の軟化を引き起こす一方で、凍結時の食感劣化をある程度抑制する効果があることが経験的に知られている。本研究では、凍結時の食感劣化、ブランチングによる劣化抑制についての機構を明らかにし、飛躍的な食感向上を実現に向けた指針を立てることを目的とする。対象青果物は、ブランチングを行ったもの、そうでないものをそれぞれ凍結し、その際の構造・物性変化についてブランチング工程同様にマルチスケールでの解析を行う。さらに、凍結速度を数段階に設定することで、生成される氷結晶の大きさによる影響についても調査する。また、インピーダンスについてはリアルタイム計測が可能なため、凍結時の氷結晶生成に伴う細胞膜構造の変化を経時的に追跡する。このとき、試料内部温度を同時に計測することで相変化にかかる時間を把握する。また、マイクロスケールにおける熱移動や力学変化を視覚化するためのシミュレーションモデルを開発も試みる。
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