2017 Fiscal Year Annual Research Report
神経保護性マクロファージを用いたイヌの変性性脊髄症に対する新規治療法の開発
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17H06729
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小畠 結 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (00805442)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 変性性脊髄症 / 神経変性疾患 / ミクログリア / マクロファージ / イヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌの変性性脊髄症 (DM) は慢性進行性の神経変性疾患で、現在まで有効な治療法は確立されていない。これまでの申請者の研究成果から、脊髄における神経炎症がDMの病態の主体であると考えられる。脊髄の免疫機構の中心的役割を担うのは、ミクログリアおよび末梢血から浸潤したマクロファージである。本研究課題では、DM発症犬から採取した末梢血単球を神経保護性マクロファージへ形質転換させ、再びDM発症犬の末梢血に戻すことで、DM発症犬の脊髄における神経炎症を抑制し神経保護効果をもたらす新規治療法の確立を目的とする。 健常犬の末梢血を用いて単球分離条件を検討した。比重遠心法および接着培養法を用いて単球を分離した場合には精製率が60%であったのに対し、比重遠心法および磁気ビーズ法を用いた場合には86-99%であった。この結果を受け、本研究では比重遠心法および磁気ビーズ法を用いて単球を分離することにした。DM発症犬の末梢血から比重遠心法と磁気ビーズを用いて単球を分離すると、85-92%の精製率で分離が可能であった。さらに、健常犬の単球を用いて神経保護性マクロファージに形質転換するための刺激条件を検討したところ、ヒトマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) および イヌインターロイキン-4 (IL-4) により刺激した場合、刺激前より刺激後の方が神経保護性因子の遺伝子発現が亢進することが明らかとなった。同様に、DM発症犬の末梢血から単球を分離して、M-CSFとIL-4を用いて刺激したところ、刺激前より刺激後の方が神経保護性因子の遺伝子発現が亢進することを確認した。また、作製した神経保護性マクロファージを標識するため超常磁性酸化鉄 (SPIO) を培地へ添加すると、98-100%の神経保護性マクロファージが細胞質内にSPIOを取り込むことが明らかとなった。現在はSPIO標識による神経保護性因子の遺伝子発現への影響について評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究に組み入れるDM症例を集めるのに時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
末梢血単球を神経保護性マクロファージへと形質転換する至適条件を決定するため、DMの症例数を増やして検討を重ねる。その後、健常犬における神経保護性マクロファージ投与の安全性試験を実施する。健常犬において重篤な副作用が認められなければ、DM発症犬に対する臨床試験を実施し、神経保護性マクロファージ投与による有効性を評価する。
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