2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Tourist Gaze and Imperialism: Re-envisioning Imperial Japan through Archival Research of Non-theatrical Film
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17H06734
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 翔太 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (00800351)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 内鮮満周遊旅行 / アマチュア映画 / ホームムービー / 堀野正雄 / ポストコロニアル批評 / 旅行映画 / トラベローグ / 帝国観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究が目的とするのは、戦前日本の帝国主義と観光の関係を、世界の映像アーカイブで再評価・保存が進む非劇場映画を対象とした映像学研究から明らかにすることである。初年度には、アマチュア旅行映画に重点を置いて以下の調査を行なった。 (1)文献資料調査:国内各地の図書館やアーカイブを訪れ、アマチュア映画・写真雑誌を網羅的に調査した。帝国拡大とアマチュア映画公共圏発展の関係を映画クラブの地理的拡散、作品内の表象、そして「事変」の時代が与えたアマチュア映画作風の変化からなる3つの側面からなる分析アプローチを確立した(成果A)。また、アマチュア映画言説とモダニズム写真言説の交流を確認する資料を収集した(成果B)。 (2)映像作品のデータベース作成と視聴: 神戸映画資料館、神戸市立博物館、アメリカ国立公文書記録局を含む国内外のアーカイブで視聴した映像をデータベース化して分析した。結果、ホーム・ムービーの延長といえる「旅行映画」とアマチュア映画のジャンルとしての「紀行映画」に形式、批評の両面で二分できることが明らかになった(成果C)。 (3)先行研究を踏まえた映像作品の分析、および(4)研究成果の発表: 国内外のフィルムアーキビストや映画研究者による小型・アマチュア映画研究、旅行映画研究、歴史学・社会学における帝国観光研究の単著、編著を網羅的に調査することで各分野の研究動向を把握し、それに対して成果A、C、Dを検討する口述発表を米国の国際学会で行なった(研究実績A)。成果Bをもとに、査読付き論文「Rerouting the Modernist Visions of Horino Masao: Territorial Photography, Mass Amateurism, and Imperial Tourism」を執筆した(刊行は次年度5月)(研究実績B)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画どおり、Association for Asian StudiesおよびSociety for Cinema and Media Studiesの学会でで口述発表を行い、査読付きの英語論文執筆に関しても、当初ターゲットとしたジャーナルとは異なるが投稿することができた。学会発表では、映画研究者に限らず現代史や文学研究者からも有意義なフィードバックを受けることができた。なお、学会発表の機会に行ったコロンビア大学図書館での文献調査や米国国立公文書記録局(NARA)での映像調査では、論文執筆に直接役立つ資料を入手することができた。また、神戸発掘映画祭や山形ドキュメンタリー映画祭で多くの映画研究者アーキビストとの意見交換を行うとともに文献資料の比較や交換を行うことができた。さらに、次年度に予定していた観光PR映画の調査についても、研究効率向上の見地から個人撮影映像を視聴する際に各アーカイブで同時に行ったため、例えばマツダ映画社、NARA、神戸映画資料館所蔵の満鉄や鉄道局の映画を視聴し、その情報をデータベース化することができた。 他方、予定していた高麗大学訪問は、同大学所蔵が多様・膨大であるため、対象映像の文脈を調査した上で臨む必要があることが調査の過程で明らかになったため同時に予定していた韓国映像資料院での現地調査とともに次年度に見送った。なお、石水博物館、新潟大学地域映像アーカイブ、京都文化博物館所蔵の映像に関しては、他機関あるいはオンラインでアクセスが可能とわかったため現地調査は見合わせた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アマチュア旅行映画の追加調査 本年度学術発表で得たフィードバックを元に、文献調査や映像視聴を含むフォローアップ調査を実施し、より精度の高い発表を日本カルチュラルスタディーズ学会でアマチュア映画研究をテーマに企画したパネルで口述発表する。また、学会発表で指摘された国際的な比較軸の必要性から国外アマチュア映画雑誌の調査も進める。 (2)観光PR映画を対象としたデータベース作成と視聴 戦前日本の非劇場映画の最大級のコレクションを持つ映画米国議会図書館での調査や世界中から朝鮮半島の映像を収集した高麗大学のコレクションでの調査を中心に、観光PR映画と呼ばれる多様な映像群の俯瞰的理解を目指す。 (3)観光PR映画の一次文献調査 国際観光局、国際文化振興会、満鉄弘報が直接発行していた『国際観光』『国際文化』『満洲グラフ』はもとより、小型映画メーカーの販促紙媒体、復刻出版された映画雑誌、新聞データベースを対象に網羅的調査を行う。
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