2017 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光マッピング観測で探る超新星爆発によるリンの生成メカニズム
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17H06739
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
國生 拓摩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60803442)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 近赤外線分光器 / 超新星残骸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超新星爆発によるリンの生成メカニズムを明らかにすることである。具体的には、南アフリカ望遠鏡IRSFに搭載する近赤外線分光器を新たに開発し、それを用いて超新星残骸におけるリンの近赤外線[PII]輝線を系統的に観測することで、リンの空間分布や生成量を調べる。 本年度は分光器の開発を進めた。本装置は光学系や検出器を約100 Kまで冷却して運用するため、冷却下での光学系の結像性能を評価した。その結果、点像のサイズがシミュレーションから予想されるものより有意に広がっていることが分かった。この原因として様々な可能性を検討したところ、検出器直前に設置されたレンズや、分散素子であるサファイアプリズムの表面形状誤差が、想定していた以上に結像性能を悪化させていることが分かった。そこで、既存のレンズを表面形状誤差の少ない新しいレンズに取り換えた。プリズムは代替品が手に入らなかったため、プリズムの表面形状を干渉計により測定し、その結果をシミュレーションに組み込み、本装置の性能を評価し直した。その結果、波長分解能や限界等級は僅かに悪化するものの、本研究の[PII]輝線観測は十分な感度で実施できることが確認された。また、本装置では分光系とスリットビュワーでそれぞれ独立に近赤外線検出器を使用するため、光学系の評価と並行して、2つの検出器を動作させる読み出し回路を作成した。 上記の開発状況や本装置を用いて行う科学研究の内容を、国際会議とその集録にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
冷却下での分光器光学系の結像性能がシミュレーションから予想されるよりも悪かったため、その原因究明を行った。あらゆる可能性を検討した結果、検出器の直前に取り付けているレンズの表面形状がメーカーの仕様値よりも悪く、結像性能を大きく悪化させていることが分かった。そこで新しいレンズを購入して既存のレンズと交換したが、曲率半径が全く同じレンズが得られなかったため、光学素子の配置を見直す必要があった。加えて、分散素子であるサファイアプリズムの表面形状誤差も、想定していた以上に結像性能を悪化させていることが分かった。プリズムは代替品が手に入らなかったため、表面形状誤差をシミュレーションに組み込むことで、装置仕様を評価し直した。これらのレンズの交換や装置仕様の改変に時間を要したため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分光器開発の遅れに伴い、IRSF望遠鏡への装置の取り付けや試験観測のスケジュールを見直し、最終年度内に南アフリカまで輸送して観測を十分に行うことは難しいと判断した。そこで鹿児島大学が運用している1 m望遠鏡に本装置を搭載し、北半球の超新星残骸の観測を行うことを検討している。1 m望遠鏡の運用責任者らと議論を重ね、9月から観測を実施する予定である。そこで、鹿児島大学へ本装置を輸送する8月頃までに光学調整を完了させ、この開発と並行して北半球から観測できる候補天体を選定する。試験観測を1週間ほど行った後、実際の観測と取得データの解析を行う。
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Research Products
(2 results)