2017 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍抑制因子Notch1がキシロース付加によって不活性化される分子機構の解析
Project/Area Number |
17H06743
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 英之 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80361608)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | Notch1 / キシロース / O-グルコース糖鎖 / Notchシグナル / 糖転移酵素 / 扁平上皮癌 / 腫瘍抑制因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、世界のフロントランナーとして、ショウジョウバエやマウスの正常個体において、Notch 受容体の O-グルコース糖鎖修飾が、Notch シグナルの活性化に必須であることを明らかにしてきた。O-グルコース糖鎖修飾はヒトにも保存されているので、Notch シグナルに異常の見られるヒトの癌でも重要な役割を果たしていると考えられるが、それを明らかにするための研究は行われていない。本研究では、Notch1 に異常の見られる癌細胞株をモデルとして、O-グルコース糖鎖修飾の癌細胞の悪性挙動における役割を明らかにすることを目的とした。HEK293T 細胞にて、キシロース転移酵素遺伝子 (GXYLT1、GXYLT2、および XXYLT1) のターゲティングを CRISPR/Cas9 技術を用いてを行った。標的遺伝子の特異的欠損は、標的ゲノム配列のシークエンシングと、 Notch1 の質量分析計を用いたグライコプロテオミクス解析によって確認した。その結果、予想通り、XXYLT1 の欠損により、末端のキシロースの付加が消失した。GXYLT1 と GXYLT2、それぞれ単独の欠損により、Notch1 上の複数の EGF リピートにおける O-グルコースへのキシロースの付加の減少がみられ、両酵素が冗長的に機能していないことが示唆された。さらに、両者を欠損させると、O-グルコースへのキシロースの付加は完全に消失したことから、この 2 種類のみが Notch1 上の EGF リピートにおける O-グルコースへのキシロースの付加を担っていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ヒト培養細胞株 HEK293T 細胞にて、キシロース転移酵素遺伝子 (GXYLT1、GXYLT2、および XXYLT1) のターゲティングを CRISPR/Cas9 技術を用いて行った。これらの遺伝子が期待通り編集され、酵素としての機能が欠失することが DNA シークエンス解析によって確認された。さらに、マウス Notch1 を HEK293T 細胞で作出、Ni アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製、質量分析計にて Notch1 上の糖鎖を解析する系を立ち上げた。この方法により、キシロース転移酵素遺伝子 (GXYLT1、GXYLT2、および XXYLT1) の欠損により、Notch1 上のキシロースの付加が消失していることが確認された。これらの結果から、キシロース付加の Notch1 活性化における役割を解析する準備が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に立ち上げた実験系を用い、解析の対象をAML細胞および、異なる臓器由来の扁平上皮癌細胞 に広げていく。さらに、キシロース付加のある Notch1 と、キシロース付加のない Notch1 へのリガンドの結合性を次の 2 通りの方法で調べる。 (1) 細胞表面上に発現した Notch1 に対するNotch リガンド結合性の解析。研究協力者の Haltiwanger 博士の方法を用いて、フローサイトメトリーにより、Notch リガンド DLL1、DLL4 、Jagged1、Jagged2 の、1 年目に作製した、野生型およびキシロース転移酵素のKO 細胞に対する結合性を定量的に解析する [Kakuda and Haltiwanger 2017 Dev Cell]。これらの細胞における Notch1 の発現は抗 Notch1 抗体により確かめる。(2) 表面プラズモン共鳴法によるNotch1 EGF1-36 と Notch リガンドとの結合性の解析。野生型およびキシロース転移酵素を KO した HEK293T 細胞にて発現させ、精製したNotch1 EGF1-36 を用いて、Notch リガンドとの結合性を表面プラズモン共鳴法によって申請者の既報と同様に解析する [Taylor*, Takeuchi*, Sheppard* et al. 2014 PNAS]。EGF1-36 の大量調製がうまくいかない場合には、発現と精製の効率の良い、リガンド結合に必須な部分を含む、より短い EGF 断片 (例えば、EGF6-15) の使用を試みる。
|