2017 Fiscal Year Annual Research Report
AlGaN/Diamond DUV Light Sources Fabricated by Direct Wafer Bonding
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17H06762
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
林 侑介 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 助教 (00800484)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ウェハ接合 / AlGaN / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
ノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオード(LED)に代表されるように、窒化ガリウム(GaN)を主材料とした発光素子の開発は日本の研究機関によって牽引されてきた。現在では、光出力が4 Wを超える青色レーザダイオード(LD)が商用化されるに至っている。その一方で、フォトリソグラフィや医療用途での需要がある紫外光のUV-C波長(200~280 nm)では、電流注入型LDは実現されていない。最も大きな障壁となっているのは、Al組成の高い窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)経由では正孔電流量が非常に小さいことである。つまり、電子の供給に対して正孔の供給は不十分であるために、従来のような発光再結合効率を実現することが難しい。これは、AlGaNのアクセプタは室温ではほとんど活性化されないためである。UV-C波長(200~280 nm)で材料が透明であるには4.4~6.2 eVのバンドギャップが要求されるが、この範囲で10 S/cmを超えるような高い導電率は実現されていない。 本質的な課題を解決するため、表面活性化接合を用いたダイヤモンド/AlGaNヘテロ構造を提案する。紫外領域で透明かつ高導電性を示すダイヤモンドは、p側クラッド材料として最適である。ただし、結晶構造や物質係数が異なるために、従来の結晶成長法では良質な結晶を得ることは難しかった。そこで、異種材料を室温で集積できる表面活性化接合を応用することで、高品質なp型ダイヤモンド/n型AlGaNヘテロ構造の実現を目指す。 29年度の実施計画として、表面活性化接合を用いたダイヤモンド/AlGaN基板の作製に取り組むことを目的とした。具体的には、試料の機械強度特性、光学特性を評価し、フォトルミネッセンス強度を90%以上に維持しながら母材並の引張強度(>10 MPa)を得られる貼り合わせ条件を見出すことが第一の目標となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではダイヤモンド/AlGaN接合の実現を目指し、プラズマ活性化接合装置を利用してAlN/AlN接合を初めて作製した。両面研磨サファイア基板の両面にスパッタ法で100 nm厚のAl極性AlNを成膜し、1700度3時間の高温熱処理した基板を実験に用いた。両面へのスパッタ成膜により基板の反り抑制が期待できる。10-4 Pa台まで真空引きをした後、窒素を流して120 Paで安定させ、RF出力500 Wで100 sプラズマを照射し、ウェハ表面を活性化した。その後、真空状態を維持しながら400kg、400 ℃の加重加熱でウェハ接合を行った。結果として2枚の基板が強固に接合されていることを確認できたため、AlN/AlN接合の光学特性評価を目的として190-2500 nmの光波長域における透過率測定を行った。 薄膜内の光干渉により生じる周期フリンジを高速フーリエ変換することで膜厚を算出し、設計膜厚にほぼ等しい108 nmを得た。この膜厚と、AlNの屈折率の文献値をパラメータとして転送行列法から透過スペクトルを計算すると、実験結果をよく近似することができた。これはすなわち、ウェハ接合に起因する光吸収・散乱などが見られなかったことを意味しており、デバイス作製に向けて好ましい結果を得ることができた。バンド端近傍における透過率スペクトルからバンドギャップエネルギーを外挿することも可能であり、今回得られた値6.08 eVはバルク値6.03 eVにほぼ一致することがわかった。本結果は、AlN膜の良好な結晶性を示すだけでなく、ウェハ接合界面において強いバンドテイリングが誘起されないことを示す証左となる。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は主として、ウェハ接合技術および光学測定方法の確立に時間を費やした。30年度では接合したウェハの機械的強度を定量的に評価することを第一の目標とする。ダイヤモンドはビッカース硬度比でAlGaNの5倍以上硬いため、AlGaNよりも長いAr原子ビーム照射時間が予想される。表面処理方法や荷重量も含めて、ダイヤモンド/AlGaNの組み合わせに適切な条件を検討する。さらにウェハ接合したAlGaN量子井戸からの発光特性評価も同時並行で進める。申請者が所属する三重大学のグループは、浜松ホトニクスとの共同研究で250 nm帯AlGaN量子井戸を活性層とする電子線励起型LEDを報告しており、製品化もなされた。本申請研究ではこのAlGaN量子井戸の成長技術を転用する。Ar原子ビーム照射や加重工程により非輻射再結合中心が増大することが予想されるため、90%以上のフォトルミネセンス強度比を維持できる照射条件・加重条件を見出す。 続いて、貼り合わせ界面のバンド構造を定量的に解明し、オーミックな電気特性を実現する。この知見をもとにp型ダイヤモンド/AlGaN量子井戸/n型AlGaNヘテロ構造を作製し、エレクトロルミネセンス(EL)の観測を目指す。初期検討としてn型AlGaN/n型AlGaNホモ接合の界面抵抗を評価した後、p型ダイヤモンド/AlGaN量子井戸/n型AlGaNヘテロ接合に取り組み、EL観測を目指す。量子井戸構造における懸念は、Ar原子ビームによる光学特性の劣化である。p型AlGaN表面保護層の導入が効果的であると考えているが、厚くなるほど導電性は低下するため、膜厚を適切に調整する必要がある。
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