2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Integrated Simulation Model of Landslide, Debris Flow and Sediment Transport Employing Contour Based Topographical Model
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17H06769
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山野井 一輝 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 特別研究員 (30806708)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / 土石流 / 統合モデル / 河床変動 / 土砂供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
豪雨時に発生する斜面崩壊、崩土の流動化による土石流の発生,土石流の発達・流下、および河道での水・土砂の流出は連続的な現象であるが,これまで別々に研究されてきたため連続解析手法は十分に確立されていない.したがって,平成29年九州北部豪雨による災害でも見られたような,斜面崩壊に起因した土石流や,生産土砂が河道部に堆積することで甚大化された洪水などの諸現象を雨から直接予測するのは困難である.連続解析が実現していない一因は,幅広い時空間スケールを持つ個々の現象群を,同一の地形モデル上で扱うことが困難なことにある. そこで本研究では流域地形を1次元のチューブの集合に分割できる等高線地形モデルを用いてこの問題を解決し,既存モデルを応用して斜面崩壊・崩土流動化・土石流流下の統合モデルを構築し,最終的には河道下流部での土砂移動までを含めた統合的解析手法の開発を目的としている.2017年度はその第一段階として,①対象流域の選定と現地調査,②対象流域を対象としたチューブ地形分割,および③既往の土砂移動モデルを利用した解析,に取り組んだ.①では2017年九州北部豪雨で被災した赤谷川を対象流域に選定して現地調査を行い,②にて赤谷川支川の乙石川での地形モデル抽出を行った.③では既往モデルとの比較検証を行うため,赤谷川と京都府宮津市の流域にて,既往モデルによる適用を実施した.次年度は解析モデルの構築に注力し,現地調査結果を元に適用を行い,解析結果を既往モデルでの結果と比較することで,妥当性や有効性の検証を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度はモデル開発の第一段階として,①対象流域の選定と現地調査,②対象流域を対象としたチューブ地形分割,および③既往モデルを利用した解析に取り組んだ. ①対象流域の選定と現地調査:計画段階では,和歌山県那智川流域,兵庫県前山川流域を対象流域として検討していたが,2017年7月に発生した九州北部豪雨災害を受け,本研究の対象とする斜面崩壊,土石流および河道部での洪水までの一連の現象が発生した赤谷川流域を対象流域として選定した.2017年度は赤谷川流域を対象に,複数回現地調査を実施した.現地調査では計算結果の検証のための洪水痕跡と河床変動痕跡調査と,斜面土層,河床材料,および崩壊による生産土砂のサンプリングを行った.斜面土層サンプルに対しては飽和透水試験と保水性試験を,河床材料と生産土砂サンプルにはふるい分け試験を実施し,計算の入力条件として想定している斜面土層の透水係数,保水性,および河床材料と生産土砂の粒度分布の情報を得た. ②対象流域を対象としたチューブ地形分割:赤谷川支川で甚大な斜面崩壊・土石流・洪水被害が生じた乙石川流域を対象として,チューブ地形分割を実施した.基礎データには,国土基盤地図情報10mメッシュのDEMデータをもとに作成した等高線を用いている.地形分割によって抽出された地形データを利用して,今後崩壊・土石流の解析を実施予定である. ③既往モデルを利用した解析:赤谷川を対象とした予備解析として,申請者らがすでに開発している崩壊と水・土砂流出を統合したモデルによるシミュレーションを実施した.また,本研究で用いる等高線地形モデルは利用していないが,降雨流出・斜面崩壊と土石流を結合した解析手法を京都府宮津市の畑川流域にて実施した.今後以上の解析手法と,今後構築される等高線地形モデルを用いた解析を比較することで,モデルの検証と評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,下記項目について研究を進展させる予定である. ①任意流域における地形モデル抽出スキームの確立:現状で5km2程度以下の小流域スケールでは抽出等高線地形モデルの抽出は容易であるが,手作業によるデータ作成が一定量必要である.本研究では等高線地形モデルによる解析で数10km2程度の流域までを対象とするため,この抽出手法を自動化し,任意流域において速やかに地形モデルが抽出できるよう改良を行う. ②斜面崩壊・土石流統合モデルの実装:等高線地形モデルにおいて,降雨データから斜面崩壊を予測したうえで,発生する崩土の流動化と土石流の流下までを解析可能な崩壊・土石流統合モデルを構築する.斜面崩壊発生までの部分には,すでに検討を進めている降雨浸透解析,簡易ヤンブ法による安全率計算,および動的計画法によるすべり面探査を組み合わせた手法を用いる.これに土石流流下過程を加えた解析法を構築する.崩土が土石流に変化する過程は,崩土が内部に水面を保ったままで運動を開始すると仮定し,飽和・不飽和混在土塊運動モデルの利用を試みる.以上の手法を従来の土石流流下解析手法に結合し,崩壊・土石流の連続解析手法を構築する. ③河道土砂動態モデルとの結合:申請者らがこれまで構築してきた,土砂生産考慮型の流域土砂動態モデルに上で構築したモデルを結合することで,斜面崩壊から河道下流部での土砂移動までを考慮した大流域スケールの解析手法を構築する.これにより,降雨データを入力条件として,斜面崩壊から下流部での洪水危険度の変化までを取り入れた統合解析手法が確立されると見込んでいる.
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Research Products
(2 results)