2017 Fiscal Year Annual Research Report
メルロ=ポンティ中期思想を手がかりとした哲学と人間科学の学際的協働可能性の探求
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17H06774
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 泰之 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定助教 (70808857)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 現象学 / 人間科学 / 文学 / メルロ=ポンティ / ヴァレリー / スタンダール / 言語 / 学際 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1) メルロ=ポンティが1950年代にコレージュ・ド・フランスで実施した講義の準備ノートなどを手がかりに、当該時期のメルロ=ポンティの思想に対する理解を深めること、ならびに、 (2) 講義の中でメルロ=ポンティが同時代の人間科学に向けている態度を一つのモデルとして、今日における哲学と人間科学の学際的協働のあり方を考察することである。 平成29年度は、近年出版された新資料の一つである、1953年のコレージュ・ド・フランス講義「言語の文学的用法の研究」の準備ノートを主に検討した。具体的には、講義第一部のヴァレリー論と第二部のスタンダール論を、『行動の構造』や『知覚の現象学』をはじめとする講義以前の諸著作や、講義でメルロ=ポンティが参照しているヴァレリーとスタンダールのテクストおよび二次研究等と突き合わせつつ読解し、断片的なメモ書きにすぎない講義準備ノートの叙述から同講義の議論を再構成した。その結果、同時期のメルロ=ポンティの人間科学への態度を特徴づけている、哲学・言語・人間等をめぐる彼の見解についての理解を深めることができた。 上記の研究成果は、立命館大学人文科学研究所紀要への投稿論文(「身体の黒魔術、言語の白魔術――メルロ=ポンティ「言語の文学的用法の研究」講義におけるヴァレリー読解をめぐって」)や、メルロ=ポンティ哲学研究会における口頭発表(「スタンダールと愛の誠実さ――メルロ=ポンティ「言語の文学的用法の研究」講義におけるスタンダール読解をめぐって」)、『メルロ=ポンティ読本』に寄稿した解説論文(「『言語の文学的用法の研究』――書くことと生きること」)などを通して公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成29年度は上記 (1) の目的に関わる研究に集中し、上記 (2) の目的に関わる研究は平成30年度に取り組む予定だった。しかし、所属研究科で学際プレFDプロジェクトに関わる機会を得たため、当初の計画を変更し、メルロ=ポンティの文献学的研究と学際性に関する理論的研究を並行して進めることになった。 その結果、上記 (1) の目的に関わる研究については、当初予定していた1953-54年度のコレージュ・ド・フランス講義「パロールの問題」の講義要録を部分的にしか検討できないといった遅れが生じたが、上記 (2) の目的に関わる研究については、学際性に関わる哲学的考察を学際プレFDという具体的実践と結びつけることで、当初の計画からは得られなかったであろう実効性の高い議論を展開することができた。 以上の事情を加味して、進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も、メルロ=ポンティの文献学的研究と学際性に関する理論的研究を並行して進めていく。 前者に関しては、平成29年度に得た「言語の文学的用法の研究」の読解成果に基づいて、メルロ=ポンティと人間科学の関係をより直接的に検討する作業を進めていく。その際、「言語」という主題に焦点を合わせていたこれまでの研究を、「人間形成」や「哲学の使命」といったより大きな主題と結びつけることを目指す。後者に関しては、平成29年度に引き続き、理論的考察と学際プレFDの実践とを往還しながら研究を進めていく。
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Research Products
(5 results)