2017 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental evaluation of tritium breeding ratio in fusion blanket mock-up
Project/Area Number |
17H06794
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 啓祐 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (70807700)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 核融合中性子 / 中性子検出 / 核融合ブランケット / トリチウム増殖 / 放電型核融合中性子源 / イメージングプレート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核融合炉ブランケットのトリチウム増殖比(TBR)の実験的な定量評価手法を確立することを目的とし、平成29年度にはその準備段階として中性子輸送計算、予備実験、中性子の発生・計測を行った。中性子輸送計算にはモンテカルロ中性子輸送コード(MCNP)及び核データFENDL-2.1を用い、実験体系中の中性子挙動をシミュレーションすることで体系の設計や材料の選定を行った。部材の中性子反射・減速性能を検討するために、ポリエチレンブロックや黒鉛ブロック、酸化ホウ素入りポリエチレンブロックで囲った体系における中性子スペクトルの材料依存性、厚さ依存性を比較した。この結果、ポリエチレンブロックが最も減速遮蔽性能が高く、上下左右対称の体系によって照射された中性子を散乱・減速することで、熱中性子と高速中性子を含む白色中性子スペクトルが得られることを示した。 予備実験として、カリフォルニウム中性子源(252Cf)を用いた中性子検出器の検量を行った。円筒放電型核融合中性子源では、電流電圧試験を実施し、効率的にD-D高速中性子(2.45 MeV)を発生させる実験条件(重水素ガス圧、電圧、電流)の最適化を行った。この結果、特に重水素圧力と電圧値が中性子の発生量に大きく寄与することを示し、重水素ガス圧力約0.8 Pa、電圧50 kV以上で 10^6 n/s以上の中性子が発生可能であることを明らかにした。本実験条件に基づき、平成30年度にはリチウム体系内における中性子計測によって、トリチウム増殖比の評価を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では一年目の研究で中性子輸送計算、実験体系の設計、材料調達、予備実験、液体増殖材を用いた体系内の実験を行うことを計画した。中性子輸送計算においては、当初の計画通り実験体系中の中性子挙動をシミュレーションし、中性子を十分に反射・減速できる体系について検討を行った。本計算の結果、中性子の効率的な反射・減速に適した材料とその厚さや配置を明らかにし、必要な実験部材の調達を行った。シミュレーション結果から実験体系外に出た中性子がコンクリート壁に反射して体系内に回帰することが示された。そこで、装置の下部やコンクリート壁付近にホウ酸水タンクを設置し、回帰中性子の影響を最小化した。実験準備として、カリフォルニウム中性子源を用い、中性子検出器のキャリブレーションを実施し、中性子フラックスを測定出来る環境を整えた。中性子の発生では、円筒放電型中性子源の電流電圧特性試験を実施し、効率的な中性子発生条件の最適化を行った。この結果、模擬ブランケット実験に必要となる10^6 n/s以上の中性子を発生させる条件を明らかにした。液体増殖材を用いた実験については、資材の到着遅延の為に年度内に実施することができなかったが、現在までに実験準備は完了しており、平成30年度の実験によって目標とするトリチウム増殖比の評価を行うことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【中性子計測】 実験体系内の中性子計測にはヘリウムガス検出器に加え、高い空間分解能で二次元検出が可能な中性子イメージングプレート(IP)を用いる。第一に予備試験としてカリフォルニウム中性子源を用いた較正を行う。ここでは、異なる露光時間で得られる輝尽蛍光密度を整理し、対数グラフ上の線形関係から中性子束の定量を行う。IPに含まれるコンバータ元素のエネルギー感受性やガンマ線/X線の効果が定量性に影響されると予測されるが、これらの効果の除去や補正を行い、最終的に実験誤差5%以下の精度を目指す。 【中性子照射実験によるトリチウム生産量の評価】 一年目に実施した中性子輸送コードを用いたシミュレーション結果をもとに、リチウム含有材料と円筒放電型中性子源を配置し、中性子照射実験を実施する。円筒放電型装置を用いて増殖材にDD核融合中性子(中性子エネルギー: 2.45 MeV)を照射し、リチウムが捕獲した中性子数と発生中性子数の比からトリチウム増殖比TBR を評価する。実験体系は増殖材と反射板で囲んだ左右対対象系とし、原型炉ブランケット内の中性子領域を模擬する。中性子発生条件はこれまでに最適化された電圧や重水素ガス圧を用い、中性子を発生させる。中性子源を増殖材と反射材で囲い、増殖材を設置した条件と設置しない条件で中性子束を測定し、その差からリチウムが捕獲した中性子数を算出する。中性子輸送コード(MCNP)を用いた計算結果との比較を行い、配置の最適化によって検出誤差を最小化し、最終的に模擬ブランケット体系におけるトリチウム増殖比の評価を行う。 【研究のとりまとめ・成果報告】 今後のDT核融合中性子トリチウム生成試験への発展に向け、得られた知見から実験体系の設計や実験条件の検討を行う。協力研究者との議論を通じて結果を整理し、国際学会(核融合工学に関する国際シンポジウム)での発表および論文の投稿を行う。
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