2017 Fiscal Year Annual Research Report
高密度な細胞外マトリックスを持つ革新的な正常・動脈硬化三次元血管壁モデルの創製
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17H06823
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中辻 博貴 大阪大学, 工学研究科, 特任研究員(常勤) (70806504)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 血管 / 細胞外マトリックス / 動脈硬化 / 三次元培養 / 平滑筋細胞 / 組織工学 / 組織モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高密度なECMを持つ三次元血管壁モデル及び動脈硬化血管壁モデルの創製である。動脈硬化好発部位である大動脈は、血管内皮細胞からなる内層、平滑筋細胞と細胞外マトリックス(ECM)からなる中層、繊維芽細胞とECMからなる外層の三つの層からなっている。その中で動脈硬化の進展には、それぞれの細胞とECMの相互作用が大きく関わっていることが知られている。大動脈血管壁においてECMは乾燥重量で約70 %とその大半の質量を占めているが従来のモデルではこのような高密度なECMを持つ三次元組織は報告されていない。本研究の遂行は、ECMと各種細胞の相互作用の影響も含めた総合的な評価を可能とし、動脈硬化の発生・進展の機序の解明や新たな予防法・薬物標的の発見に貢献することが期待できる 本年度はまず通常の三次元血管壁モデルの構築を目指した。まずECMの主成分の一つであるコラーゲンを細断化し、コラーゲンマイクロファイバーを作成した。このコラーゲンマイクロファイバーと平滑筋細胞を共培養することで高密度なECMを持つ三次元培養組織を作成することに成功した。さらにこの培養組織上に血管内皮細胞を加えることで、一層の内皮細胞層の再現にも成功した。さらに、現在この血管壁モデルに動脈硬化危険因子である酸化LDLなどを処理し、その沈着などの評価を行なっている。またこの時、単球細胞と共培養を行いながら実験することで、免疫細胞の血管壁の侵入などの評価についても同時に行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定であった、血管壁モデルの構築およびそれを用いた動脈硬化危険因子の評価までは順調に実験が遂行されている。組織の収縮の影響を排除するために、組織構築の条件の検討に時間を要したが大きな遅れには繋がっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き血管壁モデルと危険因子の応答評価を行いつつ、並行して動脈硬化モデルの構築を目指す。具体的には、本年度に作成された血管壁モデルに動脈硬化の脂質沈着を再現する脂質や酸化LDLを混合して作成する。また動脈硬化の進展には、マクロファージの浸潤と脂質の貪食による泡沫細胞化が関わっており、動脈硬化モデルとマクロファージの共培養によってマクロファージ浸潤モデルの作成を行う。 構築されたモデルの細胞機能などを評価したのちに、動脈硬化治療薬への評価試験への有効性などを評価する。スタチン系薬剤や高比重リポタンパク質(HDL)などを処理し、動脈硬化モデルの応答について詳細に評価する。
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