2017 Fiscal Year Annual Research Report
ワーキングメモリパラダイムを用いた分数に対する数覚を支える認知過程の解明
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17H06830
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷田 勇樹 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任助教(常勤) (80800218)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 分数 / 数覚 / ワーキングメモリ / 作動記憶 / 数認知 / 算数 / 数学教育 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、分数の示している数量がどれくらいの大きさかを知覚する心的機能が、数認知の発達や数学の理解にとって重要になることが明らかになってきた。しかし分数の数量を心的に表現するためにどのような心的プロセスが必要なのかはいまだ解明されていない。本研究の目的はどのような心的プロセスによって分数の数量表象を形成しているのかを明らかにすることと、分数の数量表象と数学的処理成績の関連を明らかにすることである。文献調査をしたところ、近年の研究から数量表象はどの分数も同じようなプロセスで形成されるのではないことが指摘されている。具体的には、分数は頻出分数(たとえば1/4, 1/3, 1/2, 2/3, 3/4など)と、それ以外の 非頻出分数に分けられ、非頻出分数の数量表象は数量の似た頻出分数に一度変換して形成されることが報告されている。このように、頻出分数は分数の数量表象の基盤をなすと考えられているにもかかわらず、頻出分数そのものの数量表象の特徴はいまだシステマティックに検討されていない。そこで、頻出分数の数量表象が非頻出分数の数量表象よりも正確かどうかを検討した。数量表象の精度を測定する課題である、2つの分数の大小判断課題を用いた実験を実施した。大小判断の対象になる分数ペアに頻出分数のいずれかが含まれる条件と、含まれない条件を設け、それらの条件における数量距離効果の大きさを検討した。数量距離効果の大きさは数量表象の精度を反映するため、数量表象が正確な分数が含まれるペアで数量距離効果が縮小することが予想された。数量距離効果は1/4, 1/3, 1/2を含むペアで縮小したことから、これら3つの頻出分数が正確な数量表象を持っていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画を少し修正する必要があり遅れが生じた。しかし、新たに組み直した実験によって数量表象の正確な分数を特定することができたため、大幅に遅れているわけではなくやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験によって数量表象が他の分数より正確な分数を特定することができた。次にこの結果をふまえて頻出分数の数量表象の形成にどのような心的プロセスが必要になるのかについて検討する実験を完了する。さらにその実験結果をもとに刺激選定を行い、生徒・児童の分数の数量表象の実態を検討する実験を学校で実施する予定である。
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Research Products
(1 results)