2017 Fiscal Year Annual Research Report
確率微分方程式と非衝突確率過程の数値解析に関する研究
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17H06833
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田口 大 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70804657)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 非衝突確率過程 / Dyson Brownian motion / Malliavin calculus / Levy process / 確率微分方程式 / Euler-Maruyama近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、確率微分方程式と非衝突確率過程の新たな近似理論・数値計算方法の構成と、その精密な誤差評価を与えることである。 非衝突確率過程に関する研究においては、通常のEuler-Maruyama近似では各粒子が「衝突しない」という基本的な性質を満たさないという問題があった。Hoang-Long Ngo氏(Hanoi National university of Education)との共同研究によって、通常のEuler-Maruyama近似を改良したImplicit Euler-Maruyama近似の導入に成功し、その問題点を解決した。導入のためには、ある多次元の非線形代数方程式の解の存在と一意性が必要であったが、homotopyの議論とある常微分方程式を用いてその存在と一意性の証明を与えた。さらに、導入したimplicit Euler-Maruyama近似の精密な誤差評価についても証明を与えた。また、非衝突確率過程に関する密度関数の存在についても永沼伸顕氏(大阪大学)と研究を行い、Malliavin calculusを用いて、その存在に関する証明を与えた。 Levy型確率微分方程式に関する研究においては、当初はEuler-Poisson近似を用いた研究を行う予定であったが、通常のEuler-Maruyama近似の場合に証明ができれば拡張することができるので、この場合に焦点を当て研究を行った。Li Libo氏(University of New South Wales)との共同研究によって、係数がヘルダー連続である場合に注目し、山田・渡辺の方法と呼ばれる関数の近似手法を応用することで、Levy型確率微分方程式に関するEuler-Maruyama近似の精密な誤差評価を与えた。 上記の研究は、すでに論文として成果を形にしており、数学の国際雑誌に投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況としては、おおむね順調である。 非衝突確率過程の近似理論に関する研究においては、研究計画の際に考えていた非線形多変数代数方程式の解の存在と一意性が証明できたことが第一に挙げられる。この部分が証明できなければ、本研究は全く進まないからである。誤差評価については、研究計画では問題点として挙げなかったが、ある確率変数のinverse momentの存在が必要であった。これは、確率過程が衝突しないという性質から現れる問題であるが、Hoang-Long Ngo氏との共同研究では伊藤の公式をうまく使うことによって、証明を与えた。これを証明できずには誤差評価を与えることができなかったので、これは第二の理由として挙げられる。また、当初計画していなかった、密度関数に関する研究においても、同様にinverse momentが有用であることが分かり、Hoang-Long Ngo氏との研究では用いなかった、Girsanovの定理を用いることによって、inverse momentの次数を伊藤の公式を用いた場合よりも格段に改良することができた。より正確には、Girsanovの定理を用いた場合には、その次数が次元に依存しないことが分かった。これは第三の理由として挙げられる。 Levy型確率微分方程式に関する研究においては、当初平成30年度に研究を予定していな内容であったが、非衝突確率過程の研究が進んだこともあり、前年度に研究を行った。本研究も順調に進展しているが、その理由としては、これまでに知られていたLevy型確率微分方程式の近似理論を、CIR過程のように数理ファイナンスの分野などで広く応用されている場合をjump型も含む形で結果を与えた点にある。
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Strategy for Future Research Activity |
非衝突確率過程の近似理論に関する研究においては、implicit Euler-Maruyama近似を実際に数値計算できるようにする必要がある。上でも述べたように、ある多次元の非線形代数方程式を用いる必要があるが、この方程式には、一般には具体的に解を求めることは難しい。そのため、何らかの手法(グレブナー基底など)を用いて、数値計算できるようにする必要がある。また、その他にもprojectionを用いたexplicitな数値計算方法に関する手法も研究する予定である。 Levy型確率微分方程式に関する研究においては、jump型CIR過程に焦点を絞り、研究する予定でる。近年、CIR過程にspectrally positive stable processを付け加えた確率過程が注目されている。特に、この確率過程は正の値を取るため、近似した確率過程も正であるべきである。前年度において得た結果は、その点を考慮に入れられていなかったので、implicit schemeなどを導入して、その問題点を改良する予定である。
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Research Products
(10 results)