2017 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ薄膜の座屈変形に起因する階層リンクル構造の自発的形成機構の解明
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17H06835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永島 壮 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80800317)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ・マイクロ構造 / 材料力学 / 座屈 / 薄膜 / 変形 / ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,柔軟基板に蒸着した硬質薄膜の座屈変形に起因する表面階層リンクル構造の自律形成機構解明と,同構造の機能人工物としての有用性実証を目的とする。平成29年度は,(1)使用材料の選定を兼ねた定性的観察実験と(2)薄膜の座屈変形理論の定式化に取り組んだ。以下にその具体的な成果を記す。 ・研究計画調書に記載した各種薄膜(SiOx,Pt,Diamond-like carbon)と基板(ポリジメチルシロキサン)から構成される系を使用し,いずれも特定の条件下で階層リンクル構造を形成することを顕微鏡法により確認した。また,薄膜に付与する圧縮ひずみ量の調節により,一次,二次リンクルそれぞれの幾何学寸法を制御できる可能性を示した。 ・当初は使用を計画していなかったアクリル粘着テープ基板の有用性を見出し,金属薄膜を使用した階層リンクル構造の作製に成功した。ポリジメチルシロキサンに比べ高いヤング率を有するこの基板は,圧縮ひずみ量の制御域を拡大し,多様な幾何学寸法を有した階層リンクル構造の自律形成を可能にする。 ・基板表面に蒸着した薄膜を弾性床に置かれた単純支持はりとしてモデル化し,仮想仕事の原理より階層リンクル構造の発生条件を明らかにした。本研究で定式化した結果は,一次リンクルが二次リンクルの形成に及ぼす影響を考慮したものであり,単一リンクル構造と階層リンクル構造の発生条件を明確には区別していない他の研究グループによる先行研究の問題点を解決する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画は,(1)ポリジメチルシロキサン基板表面に形成した酸化薄膜(硬化層)の座屈変形挙動解析,(2)階層リンクル構造表面の濡れ性評価,(3)薄膜の座屈変形理論の定式化である。上述の通り,(1)と(3)に関しては当初の計画以上に進展している。(2)に関しては,予定していた接触角計一式の購入が困難なため達成できていないが,接触角測定環境整備に着手しており,平成30年度に速やかに実施する予定である。以上より,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
以下三点に取り組み,階層リンクル構造の自律形成機構を明らかにし,その発現・変形を制御する汎用的な手法を確立する。また,同構造の機能表面としての有用性を実証する。 ・圧縮ひずみ量の増大に伴う座屈モードの遷移と表面微細周期構造の変化を顕微鏡法により詳細に解析する。 ・平成29年度に構築した理論の妥当性を検証する。特に,基板表面の初期凹凸形状が,薄膜の座屈変形挙動に及ぼす影響を明らかにする。 ・作製した階層リンクル構造の表面濡れ性を評価し,従来の単一リンクル構造のそれに対する優位性を示す。特に,一次,二次リンクルのアスペクト比が,液滴の静的・動的接触角や滑落角に及ぼす影響を詳細に解析する。
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Research Products
(4 results)