2017 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変動物を用いた精子成熟関連遺伝子の機能解析
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17H06840
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 伸行 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (10808281)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 精子成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物において、精巣上体は精巣で作られた精子に受精能力を付与する役割を担う。本研究では、受精のメカニズムにおいて精巣上体が果たす生理学的な役割を明らかにする目的で、ある遺伝子ファミリーを含む17遺伝子をまとめて欠損した遺伝子欠損(KO)マウスを作製し、その表現型解析を行っている。in silico解析の結果からこのファミリーを構成する遺伝子の多くが精巣上体で発現すると予想され、これらの遺伝子は精子への受精能力付加メカニズムに関与する可能性がある。これまでの研究結果からこのKO雄マウスは不妊であることが確認されている。KO精子の形態に関して、肉眼所見においては異常が認められず、また射出精液中の精子数についても異常は認められなかった。また、体外受精を行うと卵子と受精することから、不妊の原因は精子が子宮内に射出されてから受精の場である卵管膨大部に至るまでの間にあると予想された。 KO精子が子宮から卵管へ移行できないという表現型はこれまでにも複数の遺伝子において報告されているが、それらの多くでは共通して精子頭部のある膜上タンパク質が消失していた。解析中のKO精子を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、この膜上タンパク質が消失していることが確認された。この結果から、当該KO精子は卵管膨大部へ移行できず、受精が起こらないことで不妊となっていることが示唆された。 また、野生型雄マウスの精巣上体をもちいてRNA-seq解析を行った結果、精巣上体で発現が認められた遺伝子は17遺伝子中8つであった。不妊の原因遺伝子はこれら8つの遺伝子の中に存在すると考えられ、それを突き止めるために今後さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予定通り不妊原因と予想されていた精子膜上タンパク質の消失を確認できた。また、RNA-seq解析の結果から不妊原因遺伝子を絞り込むことに成功した。その一方で、予定していた雌生殖道内におけるKO精子の挙動解析を実施できておらず、その点に関しては次年度の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
絞り込みに成功した不妊の原因遺伝子と予想される8つの候補について、さらに絞り込みを行い、原因遺伝子の特定を試みる。それと並行してKO精子の雌生殖道内での挙動解析を行うことで、精子が卵管膨大部への移行できないことが不妊の原因であることを実証する。 また、特定された不妊の原因因子が精子に受精能力を付与する作用機序を明らかにする目的で、原因タンパクと相互作用する精子側のタンパク質の探索を試みる。
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