2017 Fiscal Year Annual Research Report
一細胞レベルの四次元全脳活動マッピングによる精神疾患病態の新規解析法の確立
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17H06842
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勢力 薫 大阪大学, 薬学研究科, 招へい教員 (90802918)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 薬理学 / イメージング / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患の病態機序や治療薬の効果機序には不明な点が残されており、それらを理解するためには、病態の進行や薬物治療に伴って経時的に変化する脳活動パターンを細胞レベルの精細さで捉え、症状や治療効果に関わる細胞や神経ネットワークを特定することが有効であると考えられる。そのため、これまでに細胞レベルの精細さで実験動物の脳全体を観察する顕微鏡イメージング技術を開発してきた。本年度の研究では、脳全体における個々の細胞の活動と空間分布、その時間的な変化の解析を可能にするために、研究計画書に基づいて神経細胞の機能的・経時的な多色ラベル法の開発に取り組み、以下の成果を得た。 神経細胞の機能的・経時的な多色ラベル法の開発 遺伝子改変マウスやウイルスベクターに使用するための遺伝子配列として、活動依存的な神経細胞の標識を複数回行うことができ、さらに標識した時間枠ごとに細胞を色分けして識別できる遺伝子配列を作製し、その機能評価を実施した。配列作製では、神経活動に伴い転写促進される最初期遺伝子c-fosのプロモーター制御下に緑色蛍光蛋白質と、Cre組換え酵素やテトラサイクリン制御性トランス活性化因子tTAまたはrtTAなど複数種の遺伝子発現制御系を発現する配列と、各遺伝子発現制御系に応じて異なる色の蛍光蛋白質を発現する遺伝子配列の2種類の作製を完了した。培養細胞を用いた検討ではCre組換え酵素やtTA依存的な多色標識に成功したので、マウス脳内での標識効率を検討するために、これら遺伝子を搭載したレンチウイルスベクターを作製し、検討を進めている。現時点では、マウス前頭前皮質への局所注入において、標識された細胞数がCreやtTAの間で異なるという結果が得られており、再現性を確認した上で必要に応じてタンパク質分解配列の付加などにより各遺伝子発現制御系の標識効率を同程度に制御する必要性があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種類の遺伝子発現制御系を介した細胞の標識効率を均一化する必要が生じたものの、これらはタンパク質分解配列の付加などにより改善が期待できる。研究目標を達成するための遺伝子配列の作製はほぼ完了し、ウイルスベクターを用いたマウス脳内での機能評価も進んでいることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の遺伝子発現制御系を介した細胞の標識効率を同程度に制御するため、時間分解能の異なる複数種のタンパク質分解配列の効果を検討し、最適な標識効率となるものを決定する。これにより、活動した神経細胞を任意の時期に複数回標識可能な遺伝子改変マウスの作製を試みる。また、次年度は細胞レベルの活動変化の解析法の確立に向け、過去の研究で得たマウス全脳画像データを用いて画像処理や分析手法の検討を進める。
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