2017 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞由来尿中シェディング産物の網羅的検出を応用した胃癌バイオマーカーの探索
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17H06845
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩 隆臣 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50804465)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 胃癌 / Trefoil factor / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌はわが国におけるもっとも罹患率が高い悪性腫瘍の一つである。近年、検診の普及と内視鏡診断技術の向上に伴い、胃癌の早期発見の割合が増加し、根治が望めるようになってきた。しかし、未だに進行した状態で発見される症例も多く、有効な胃癌早期診断システムの開発が望まれる。 我々はこれまでに共同研究者として実施した文部科学省次世代がん研究戦略推進プロジェクトで得られたデータの中から、胃癌新規バイオマーカーを合計12 種類同定した。一方今回のプロジェクトで採用され、解析された胃癌患者サンプルは30 数症例と少なく、胃癌におけるこれら候補蛋白の役割も不明であることから、バイオマーカーとして実臨床で用いることができるかどうかは未知数である。 本研究ではこれらの12種類の蛋白の中からより癌との関連が深いと思われるものを選定し、胃癌手術により得られた腫瘍組織検体における発現量と臨床情報との相関について調べる。また、胃癌患者および健常者ボランティアの尿および血中の発現量を測定し、臨床情報と照合することで新規バイオマーカーとしての有用性を検討する。さらには術後経過観察中や化学療法施行中の蛋白発現量の推移を解析することで、再発マーカーとしての有用性や治療効果判定における有用性についてもあわせて検討する。 臨床検体の解析により得られた結果を元に胃癌細胞株に対する遺伝子導入法を用いた蛋白の機能解析、遺伝子導入した胃癌細胞株を使用した動物実験による解析を行い、胃癌と同蛋白との関連性について明らかにすることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文部科学省次世代がん研究戦略推進プロジェクトで胃癌の新規バイオマーカーの候補として挙げられた蛋白のうち、萎縮性胃炎で高発現し、これまでにも癌との関連が示唆されているTrefoil factor 3 (TFF3)に着目した。 2012年4月から2015年4月までの間に当院で胃癌に対して胃癌切除術(R0)を施行した患者111人を対象に、抗TFF3 抗体を用いて胃癌切除組織の免疫染色を行った。その結果、胃癌組織のTFF3 発現は、腫瘍の進行度に一致して高くなっていた。また胃癌患者における血清TFF3の発現においても腫瘍量および進行度に一致して高くなっており、胃癌組織および血清TFF3 発現の高い症例と低い症例の2群における無再発生存期間の比較では、TFF3発現の高い群の予後が有意に不良であった。以上より、腫瘍より排出された尿中あるいは血中に存在するTFF3 発現量は胃癌の新たなバイオマーカーとなり得ることが示唆された。今後は同蛋白の機能解析を目的として、さらなる研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が保有する胃癌細胞株の中からTFF3発現の高い細胞株を同定し、これらに遺伝子導入を行う予定である。遺伝子導入を行った細胞株を用いてproliferation assayやwound healing assay、その他機能解析に有用な解析を行い、TFF3の機能について検討を行う。さらに、これらの解析から導き出された機能についてその機序を解明するためにwestern blotなどの蛋白解析等を行い、機序の解明を計画している。 また、これまでは胃癌切除症例のみを対象とし解析を行ってきたが、今後は術後再発症例や切除不能症例、化学療法中の症例等についても同様に尿中・血中TFF3の発現量の推移を解析し、腫瘍量との相関をみることで再発マーカーや治療効果判定における有用性について検討する。 さらに、TFF3以外にもHuman epididymal protein 4 (HE4)も胃癌の新規バイオマーカーの候補蛋白として挙げられる。今後はHE4についても同様の検討を行い、新規バイオマーカーとしての有用性を検討していく予定である。
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