2017 Fiscal Year Annual Research Report
血液中エクソソームに着目した去勢抵抗性前立腺癌特異的タンパクの網羅的探索
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17H06846
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 剛佑 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00804410)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 去勢抵抗性前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はまず、前立腺癌患者から採取した血清よりエクソソームを分離しタンパク質を抽出することから着手した。エクソソームのタンパク解析においてはアルブミンなどの夾雑タンパクの除去が重要であるため、エクソソーム回収法としては夾雑タンパクの除去に優れたスクロースクッション法を選択した。エクソソームが回収できていることは3つの方法で確認した。まず、ウエスタンブロット法によりエクソソーム表面マーカーであるCD9、CD63の発現を確認し、続いてナノ粒子トラッキング解析により粒子径・粒子数の測定を行い、エクソソームに相当する径の粒子が回収できていることを確認した。さらに電子顕微鏡により、抗CD9抗体、金コロイド標識付きの2次抗体を反応させることで、表面にCD9を発現する200nm以下の粒子を確認した。 次に、アルブミンなどの夾雑タンパクが除去できていることを確認した。DCプロテインアッセイによるタンパク濃度測定ではいずれの血清エクソソームサンプルも測定感度以下であった。また、タンパク電気泳動後のシプロルビー染色を行なったところ、精製前の血清ではアルブミンをはじめ多数のバンドが検出されるのに対してエクソソームサンプルではバンドは検出されなかった。 続いて、エクソソームの回収・精製が出来ていることを、網羅的タンパク解析でも確認する方針とした。健常者1名、CRPC患者2名の血清200ulよりエクソソームを回収し、 非標識でLC-MS/MS分析でタンパクの同定を行なった。質量分析器Q Exactiveを用いて測定したところ、3症例から合計849個のタンパクを同定した。これは他癌種の報告と比較して遜色ないものであった。さらにgene ontology解析を行ない、エクソソームに関連するこタンパクが多く含まれていることを確認した。以上より、エクソソームの回収、精製が十分に出来ていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画書では平成29年度中に各治療病期の患者血清の比較解析を行ない、去勢抵抗性前立腺癌に特異的なタンパク質を同定する予定であったが、エクソソームの回収・精製の確認を多角的に行なっていたため、進捗状況はやや遅れいている。
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Strategy for Future Research Activity |
各治療病期の患者血清を比較解析し、去勢抵抗性前立腺癌に特異的なタンパク質を同定する。さらに同定したタンパク質の機能解析および転移浸潤メカニズムの解明のため、前立腺癌細胞株を用いて分子生物学的手法による機能解析を行なう。また血清中癌特異的エクソソームは微小環境を制御しうるタンパク質と想定されるため、転移浸潤において促進的な作用を有するかについて、細胞実験および動物実験モデルを用いて機能解析を行う。また、血液バイオマーカーとしてのみ有用として同定し得たタンパク質のみならず、治療標的候補タンパク質も定量を行う。定量化の方法としては SRM/MRM による標的プロテオミクスを行う。
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