2017 Fiscal Year Annual Research Report
授業参加に困難を抱える児童に対する支援体制の構築と学力・学校適応への効果検討
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17H06855
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
庭山 和貴 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 准教授 (80805987)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ポジティブ行動支援 / 授業参加 / セルフモニタリング / 言語賞賛 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、指示された課題・活動に取り組むといった子どもの「授業参加行動」を促進する校内支援体制の構築に学校側と連携して取り組み、その結果として学級規模ではこのような支援体制を整えることができた。具体的には、児童の授業参加行動を促進する効果が先行研究により実証されている「授業参加行動を教師が具体的に褒める・認めること」(以下、具体的な言語賞賛とする)を、教師が授業中に行いやすいような体制を整えた。その内容としては、(1)担任教師が自身の授業中の具体的な言語賞賛の回数を、一日一授業、自己記録する、(2)担任教師は放課後に言語賞賛回数を生徒指導担当教諭に報告する、(3)生徒指導担当教諭はそれをグラフ化し、担任教諭に対して取り組みを継続していること、また言語賞賛回数の増加に対してポジティブなコメントをする、という3点を行った。以上のような取り組みを、学級経営に困難を抱え、児童の授業参加行動を伸ばしていく必要があると考えられた公立小学校2学級の担任教師2名を対象として実施した。 効果検証のために、授業中の教室内において児童らの行動観察を行った。この行動観察に基づいて、学級の平均授業参加率を算出し、これを効果検証のために用いた。また併せて、学校内で日常的に行われているテストの得点を偏差値の形にして、支援導入前後で学級内の学力の分散が縮小するかどうかも検討した。 その結果、上記のような学級規模の支援を導入後、2学級とも学級の平均授業参加率が増えることが確認された。またテスト得点の分散が縮小することも確認された。担任教師の報告からは、本研究の介入方法が、受け入れやすく、また効果があることを教師としても実感していたことが明らかとなった。現在、以上のような研究成果を英語論文としてまとめ、国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、児童生徒の授業参加行動を促進する支援体制を学校現場と協働して構築し、それによって児童生徒の授業参加行動が促進されるのか、また学力や学校適応への影響を検証するものである。 平成29年度においては、学級規模ではあるもののこのような支援体制を構築することができた。さらにその成果として、児童の授業参加行動が増えることを実証し、学力面においても学級内の格差が縮小することを示唆するデータが得られている。また、以上のような研究成果を英語論文としてまとめ、国際誌に現在投稿中である。 今後は学校全体としてこのような支援体制を構築していく必要があるが、このような観点においても現在のところおおむね順調に進展しており、上記のように自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から引き続き校内支援体制を整えるために、米国を中心に近年急速に普及しているSchool-Wide Positive Behavioral Interventions and Supports (学校全体で取り組むポジティブな行動支援; SW-PBIS) を参考とする。まず、SW-PBISにどれだけ忠実に取り組めているかの指標であるTiered Fidelity Inventory (TFI) の翻訳を行う。翻訳したTFIを用いて、学校内の支援体制がどれだけ整っているかを評価し、これをもとに行動計画を作成する。学校側と協働しながら行動計画を遂行していくことで、校内支援体制の整備を進める。 校内支援体制を整える上では、特に「データに基づく意思決定システム」の構築を重視する。具体的には、児童生徒の授業参加行動を行動観察や教師評定によって把握するデータシステムや、授業参加行動とは真逆の行動である授業妨害行動がどれだけ減少しているか(これが減少していることは、授業参加行動の増加を示唆する)を把握するための生徒指導に関するデータシステムを構築する。この際、米国で問題行動件数の把握のために用いられているOffice Discipline Referral (ODR) をもとに、日本版の生徒指導記録シートを作成し、授業中に問題行動が起きていることを把握するような内容を含める。これによって、授業中の問題行動の頻度を日常的に把握できるようにし、児童生徒の授業中の実態をデータ化する。このようなデータと直接的な行動観察のデータに基づいて、どの時間帯、曜日、教科などで、特に授業参加行動を促進する支援が必要なのか把握し、それに基づいて支援を行う体制を学校側と協働して整える。 以上のような支援体制を整えることが、子どもの授業参加行動や、学力・学校適応に及ぼす効果を検証する。
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