2017 Fiscal Year Annual Research Report
食品因子による特異的な脱SUMO化酵素の阻害を介した高血糖予防効果の解明
Project/Area Number |
17H06856
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 泰淳 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 学術研究員 (80801513)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | インスリン / 膵臓 / SENP |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年の「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人と推計されることがわかった。高血糖および糖尿病を防ぐには血糖値を正常に制御することが重要である。膵臓から分泌されるインスリンは、抹消組織である筋肉や脂肪組織に糖を取り込ませることで血糖の制御を行っている。本研究では、脱SUMO化酵素に着目し、膵島からのインスリン分泌機構の解明および有効な食品因子の探索について検討することを目的としている。平成29年度は、マウス膵β細胞由来細胞株MIN6を用いて、食品因子の脱SUMO化酵素SENP1およびSENP2の発現量に与える影響について検討した。MIN6細胞は、グルコースに応答し、SENP1を活性化させてインスリンを分泌することが知られている細胞株であることから、異なるグルコース濃度の培養条件で検討した。また、食品因子の処理時間はタンパク質の発現を考慮し、24時間前処理とした。低グルコース濃度培養条件下において、テオフィリンの処理は、SENP1の発現量を有意に上昇させ、SENP2の発現量を上昇させた。一方で、カフェインの処理は、SENP1の発現量を減少させ、SENP2の発現量に影響は与えなかった。高グルコース濃度培養条件下において、テオブロミン処理は、SENP1の発現量を上昇させ、SENP2の発現量を有意に上昇させた。一方で、アデノシン処理は、SENP1の発現量を有意に減少させ、SENP2の発現量に影響を与えなかった。これらのことから、グルコース濃度の培養条件の違いが、食品因子の脱SUMO化酵素の発現に与える影響に差異が生じることが明らかとなった。今後は、脱SUMO化酵素を介したインスリン分泌機構を解明し、食品因子による効果を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、上記の結果の通り、グルコース濃度の培養条件により、食品因子の効果が異なることが明らかになったことから、インスリン分泌機構にも違いが生じていることが示唆された。そこで、それぞれの条件下におけるインスリン分泌機構を詳細に解明することが必要である。また、マウスより単離された膵島における検討が進んでいないことから、当初の計画よりはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、正常のグルコース濃度のみの条件で検討する予定であった。しかしながら、グルコース濃度の条件により結果に差異が生じたことを受け、それぞれのモデルにおいてインスリン分泌機構を詳細に検討することとした。また、マウスより単離した膵島においても検討する予定である。さらに、インスリン分泌を促進させる食品因子を用いて、マウスにおける高血糖予防効果を検証する予定である。
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