2017 Fiscal Year Annual Research Report
ガス惑星内部構造の推定に向けた磁気流体波動の理論的研究
Project/Area Number |
17H06859
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀 久美子 神戸大学, システム情報学研究科, 特命助教 (30636858)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | 地球惑星内部物理学 / 磁気流体波動 / 木星探査 / ダイナモ / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速自転する球殻の中にある電気伝導性流体の線形波動を解析した。従来は非圧縮性の流体が想定され、地球液体コアでの励起や地磁気変動への寄与が議論されてきた。本研究では、これを圧縮性(または密度成層)を考慮した理論へ改良し、木星などを始めとするガス惑星の深部ダイナミクスへ応用することを目指している。本年度は、軸対称モードの一つであるねじれアルフヴェン波に注目し、その定式化と数値計算を行った。 定式化により、(a) ガス惑星におけるねじれアルフヴェン波は、自転軸方向に平均した密度と磁場強度とに依存して、円柱座標系の半径方向に伝播するだろうこと、(b) 分子金属層と金属水素層とが、ねじれアルフヴェン波を介した角運動量交換により、力学的または電磁気的に相互作用するだろうこと、が示唆された。 このような磁気流体波が木星で実際に励起されうるか評価するため、分子・金属水素層とその間の遷移層とを考慮した非線形ダイナモシミュレーションを行い、その時間変動データを精査した。その結果、上述の理論から期待された速度で伝播するねじれアルフヴェン波、および、分子・金属水素層の間の角運動量交換を、確認することができた。さらに、分子水素から金属水素への遷移によって、ねじれアルフヴェン波が部分的に反射し定常波が形成されうることが、新たにわかった。木星におけるねじれアルフヴェン波の典型的時間スケールは数年程度と見積もられ、分子水素層上部における東西帯状流の緯度・時間変化や自転速度の時間変動を起こしうることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度研究計画の主要課題であった軸対称モード(ねじれアルフヴェン波)に関する初期結果が概ねまとまり、現在、国際誌への投稿を準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
非軸対称モードの主モードである磁気ロスビー波へ解析を拡張する。現在木星軌道上にある探査機 Juno により、木星磁場の空間構造とその数年スケールの時間変動が明らかにされる予定である。これを見据え、数年よりも短い時間スケールの磁場変動をおこす可能性がある、速い磁気ロスビー波モードに特に注目していく。
|