2017 Fiscal Year Annual Research Report
個々人の学習への没入を妨げずに学習者同士を繋ぐ学習インターフェイスの実験的検討
Project/Area Number |
17H06863
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
澤山 郁夫 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 助教 (10806194)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | eラーニング / SNS / 学習者特性 / 社会的促進 / 社会的抑制 / 内省報告 / 学習成績 / 教育工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
eラーニングに「学習者同士の繋がる仕組み」を導入することは,日常的な学習への取りかかりの継続に効果をもつ(Sawayama & Terasawa, 2015)。一方,学習開始前に,学習量に対する効力感を十分に高く有している学習者においては,「学習者同士の繋がる仕組み」が稼働する条件では,稼働しない条件よりも,学習量が抑制されることも明らかになっている(Sawayama, Sannomiya, & Terasawa, 2016)。一見,矛盾するように思えるこの二つの事象は,「学習者同士の繋がる仕組み」が,学習への取りかかりを促す一方で,学習への深い没入を妨げている可能性を示唆している。 このような背景のもと,本研究課題では,調査・実験により上述した仮説を検証するとともに,「学習者同士の繋がる仕組み」がポジティブに働く状況とネガティブに働く状況についての理論的整理を試みることを目的の一つとした。そして初年度は,この目的を達成するための調査・実験システムの開発に注力した。具体的には,「学習者同士の繋がる仕組み」を稼働させる群と稼働させない群の間で,プレテストからポストテストにかけての客観的な学習成績の向上の仕方に違いが認められるか否かや,「学習者同士の繋がる仕組み」が自身の学習に与える影響についての主観的な内省報告をデータとして得るシステムを開発した。このシステムでは,回答者は次の手順で回答を行う:(1)フェイスシート(各群共通),(2)プレテスト(各群共通),(3)学習用課題(「学習者同士の繋がる仕組み」の稼働群・非稼働群へ無作為割付),(4)ポストテスト(各群共通),(5)事後アンケート(各群共通)。開発したシステムについてはテスト試行を加え,正常に稼働することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を遂行する上で最も懸念された事項は,調査・実験の参加者を十分に確保できるかどうかであった。とくに,主観的な内省報告を得るためには,参加者に比較的長時間にわたりeラーニングシステムを体験してもらったり,自由記述調査に丁寧に回答してもらったりする必要があるため,データ収集に困難を伴うことが予想された。検討を重ねた結果,2年目に予定していた客観的指標による仮説検証実験の一部は,1年目に予定していた主観的な内省報告を得るための調査と統合して実施できることがわかった。また,データ収集についても,オンライン調査会社のモニタープールから参加者を募ることで,十分なサンプルサイズを確保することができる目処がたった。したがって,この方向で研究計画の一部を見直した。結果,統合実施に向けてのシステム開発は初年度内に完了し,翌年度スムーズにデータ収集を行う準備が整った。ゆえに,初年度の研究計画は,おおむね順調に進展したと判断しうる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,開発したシステムを用いたデータ収集および分析を行う。分析においては,主観的指標である内省報告と,客観的指標である学習成績の両者から,「学習者同士の繋がる仕組み」がポジティブに働く状況とネガティブに働く状況についての理論的整理を試みる。 補足的な事項として,中学生を対象とした調査を実施した結果,学校の授業と家庭学習を比較したとき,「学校の授業の方が集中できる」という生徒と,「家庭学習の方が集中できる」という生徒の両者が存在していることが示された(次年度発表予定)。これは,本研究課題が背景とする事象と同様に,他者の存在は促進要因にも抑制要因にもなりうること,またその内省としては「集中」という言葉で表現されうることを示している。今後,このような関連事象について,包括的に説明可能な理論についても情報収集を行い,より効果的な学習インターフェイスのあり方について検討を進めていく。
|
Research Products
(1 results)