2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H06867
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
河野 直樹 秋田大学, 理工学研究科, 特任講師 (60800886)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 励起子 / シンチレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機無機層状構造を形成する有機無機ペロブスカイト型化合物を利用し、高速応答シンチレータの開発を行った。具体的にはフェネチルアミンを導入した有機無機ペロブスカイト型化合物の単結晶を作製し、シンチレーション特性の評価を行った。この結果、γ線照射下の発光量が15000 photons/MeVであり、市販品であるGSO:Ceの1.5倍の発光量を実現した。さらに、X線照射下の蛍光寿命がおよそ10 nsであり、GSO:Ceの40 nsと比較して極めて高速な応答を示すことがわかった。 加えて、有機無機ペロブスカイト型化合物のシンチレーション特性機構を詳細に調べるために、真空紫外光を励起源として用いる励起スペクトルの測定を行った。その結果、放射線照射下において生じると予想された有機層から無機層へのエネルギー移動の発光特性の影響がほぼ無視できることがわかった。以上の結果、有機無機ペロブスカイト型化合物のシンチレーション特性が無機層の結晶構造で決まることを実証した。 また、さらなるシンチレーション特性の向上に向けて、ハロゲン置換基を有するフェネチルアミンを導入した有機無機ペロブスカイト型化合物に作製を行った。その結果、F置換基を有するフェネチルアミンを導入した単結晶の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェネチルアミンを導入した有機無機ペロブスカイト型化合物が、15000photons/MeVの大きな発光量を示し、目標である18000 photons/MeVに近い発光量であることを実証し論文発表を行った。さらに真空紫外光を用いた励起スペクトルから、有機層から無機層へのエネルギー移動のシンチレーション特性への影響を無視できることを実証し論文発表を行った。加えて、F置換基を導入したフェネチルアミンを用いた有機無機ペロブスカイト型化合物の単結晶の作製に成功し、その他のハロゲン置換基を導入したフェネチルアミンを用いた有機無機ペロブスカイト型化合物の単結晶の作製に目処がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、有機無機ペロブスカイト型化合物の有機層の種類に通じた構造・物性制御を行うことで、シンチレーション特性の向上を目指す。具体的には、フェネチルアミンに置換基を導入した試料を作製する。本研究では合成、光物性、シンチレーション特性評価を、互いの結果をフィードバックさせつつ行う。昨年度に、フッ素を置換基として導入した単結晶の作製を行った。本年度は、塩素や臭素を導入した単結晶の作製を行う。得られた成果は都度、応用物理学会、セラミックス協会で発表し、ある程度内容がまとまった時点で、Opt. Mater等の専門誌で発表を行う。 単結晶の合成は貧溶媒拡散法を用いる。有機化学種としては、ベンジルエチルアミンのベンゼン環にハロゲン基をオルト、メタ、パラ位に導入する。粉末X線回折法や単結晶構造解析法により、無機層や有機層の結晶構造を決定する。これらの解析により、有機化学種に導入した置換基の無機層結晶構造への影響を評価する。 粉末X線回折や単結晶構造解析は大学の共通機器で使用可能である。透過・反射率、真空紫外から近赤外領域までの広い波長域における蛍光スペクトル、蛍光減衰時定数評価、量子収率評価を行い、基礎物性を把握する。また必要に応じてUVSOR 等のシンクロトロン放射光施設にて実験を行う。これまでの申請者の研究により、光物性とシンチレーション特性に高い相関があることがわかっている。これらの基礎的な光物性評価により有望な有機化学種を選定する。また、X線照射時のシンチレーションスペクトル及び蛍光減衰時定数を評価する。さらに、γ線照射下のシンチレーション発光量、および発光量やエネルギー分解能のγ線エネルギー依存性を調べる。加えて、輝尽蛍光特性を評価することで、欠陥準位や量を把握する。これらの評価を行った結果、特性の良い材料を見いだした場合には、結晶育成条件の改善によりさらなる特性向上を目指す。
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Research Products
(6 results)