2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of regulatory mechanism of nitric oxide synthesis and physiological role found in yeast
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17H06869
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 雄樹 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (30807483)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / 酵母 / 6-ホスホグルコン酸脱水素酵素 / ペントースリン酸回路 / 哺乳類ホモログ |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母における一酸化窒素(NO)合成関連因子の探索 : 研究代表者が所属する研究室において過酸化水素処理条件でのNO合成にフラボタンパク質であるTah18が関与することを明らかにしている。NO合成関連因子の同定を目的とし、Tah18と相互作用するタンパク質を共免疫沈降によって相互作用タンパク質を探索・同定した。その結果、複数のタンパク質が同定され、それぞれの遺伝子破壊株を作製し、過酸化水素処理条件下でのNO合成について評価した。候補タンパク質の内、6-ホスホグルコン酸脱水素酵素(Gnd1)の破壊株において、過酸化水素処理条件でのNO合成が他の菌株と比較してほとんど見られなくなった。このことから、酵母におけるNO合成にはペントースリン酸回路を介したNADPH合成が関与することが示唆された。 酵母に見出したNO合成機構の普遍性の検討 : これまで研究代表者の所属する研究室において、Tah18およびTah18と複合体を形成する鉄硫黄クラスタータンパク質Dre2を、それぞれNO合成に関与する因子として見出した。一方、哺乳類におけるホモログNdor1およびCiapin1はこれまでNOに関与するという報告は無かった。そこで、Ndor1とCiapin1をTah18およびDre2と置換した菌株を作製し、過酸化水素処理条件でのNO合成量を評価した。その結果、野生型株と比較してNO合成量に影響は見られなかった。また、過酸化水素処理条件でのNdor1-Ciapin1間の相互座用を解析したところ、Tah18-Dre2複合体と同様に過酸化水素処理に伴って複合体が解離した。 本研究を通して、酵母における新たなNO合成に関与する因子を同定できた。また酵母に見出したNO合成機構が哺乳類に至るまで保存される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が目的としている新規な一酸化窒素(NO)合成機構に関与する因子の探索・同定のためのスクリーニングの条件検討において、Tah18の共免疫沈降の条件の最適化や、実験に必要な菌株の作成に時間を要し、当初予定していた研究の実施予定よりもやや遅れる原因となった。また、Tah18とDre2の哺乳類ホモログNdor1およびCiapin1を置換する過程で、Ndor1をTah18と置換した菌株では菌株が生育できず、Dre2をCiapin1と置換した菌株でのみTah18とNdor1の置換が可能であった。この菌株作製に必要な条件の検証に時間を要し、研究の実施予定よりも遅れる原因の一つとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を通して、酵母における新たなNO合成に関与する因子を同定できたため、今後はGnd1がどのようにNO合成に寄与するかを検討する。まず、Gnd1は、ペントースリン酸回路において、NADPH合成に関与する酵素である。研究代表者は当初本研究でのスクリーニングを通してNO合成酵素であるNOSのオキシゲナーゼに相当するタンパク質の同定も視野に入れていたため、この可能性を検証する。まず遺伝学的なアプローチとして、Gnd1の代謝経路の上流に位置するSol3およびSol4の遺伝子破壊株でのNO合成能の評価を行うことで、Gnd1の基質となる6-ホスホグルコン酸の供給がNO合成に必須であるかを検討する。これにより、Gnd1の既知の機能であるNADPH合成がNO合成に寄与するかどうかを検討する。 これまで研究代表者の研究により、Tah18の相互作用タンパク質であるDre2が、Tah18から伝達される電子を優先的に受け取ることで、酵母におけるTah18が関与するNO合成を間接的に抑制している可能性が示されている。今回の成果から、Tah18-Dre2複合体がNO合成に関与する機能が哺乳類に至るまで保存される可能性が示され、Dre2の哺乳類ホモログであるCiapin1はアポトーシス誘導時にカスパーゼ3によって分解されることが報告されている。そこで研究代表者は、酵母におけるメタカスパーゼMca1が酵母におけるTah18-Dre2複合体の解離に関与し、NO合成量の調節に関与し細胞死誘導機構の一つとして働くと考えた。そこで過酸化水素処理条件下でのTah18-Dre2間の相互作用について野生型株とMCA1遺伝子の破壊株を比較する。さらに、Dre2のタンパク質発現量の増減に伴う細胞生存率およびカスパーゼ活性の測定を行う。
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Research Products
(3 results)