2017 Fiscal Year Annual Research Report
CCN2とVASH1による新たな内軟骨性骨化調節メカニズムの解明
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17H06885
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村瀬 友里香 岡山大学, 大学病院, 医員 (70803708)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | CCN2 / VASH1 / 内軟骨性骨化 / 軟骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は予備実験において、軟骨細胞の分化後期に血管新生阻害因子VASH1が血管新生因子CCN2と同様の発現パターンで上昇するという興味ある知見を得ている。本研究では、両分子の内軟骨性骨化における役割を解析し、新たな内軟骨性骨化調節メカニズムを解明することを目的としている。 そこで本年度は、軟骨におけるCCN2とVASH1の相互あるいは一方向性の発現制御メカニズムを解明することを目的とし、軟骨細胞における両分子の関係性をloss or gain-of-functionの手法を用いて解析した。また、VASH1は、血管内皮細胞において活性酸素分解酵素SOD2の発現を正に制御するという報告があるため、軟骨細胞においても同様の制御関係が成立するか否か検討した。 ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8において、CCN2の発現をsiRNAでノックダウンすると、VASH1 mRNAの発現が低下した。ところが、ヒトVASH1発現ベクターを用いてVASH1を過剰発現させても、CCN2 mRNAの発現に大きな変動は認められなかった。一方で、VASH1を過剰発現させると、SOD2 mRNAの発現が増加した。 以上の結果は、軟骨細胞においてVASH1は、CCN2の下流に位置し、SOD2の上流に位置することを示している。 血管内皮細胞においてVASH1は、SOD2を誘導し活性酸素種(ROS)のレベルを低下させることが知られている。内軟骨性骨化過程においては、軟骨細胞の分化が進行するとともに細胞内のROSレベルが上昇し、その結果アポトーシスが誘導されるという報告がある。以上の結果より、肥大軟骨細胞においてSOD2は、上流のCCN2によるVASH1の発現亢進を介して誘導され、ROSレベルの上昇を抑制し、軟骨細胞分化の最終段階である細胞死を分化終末期まで防いでいる可能性が推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①軟骨においてCCN2とVASH1がどのように発現を制御し合い、相互・共同作用するのか、②CCN2とVASH1の発現制御および相互・共同作用が内軟骨性骨化にどのような影響を与えるのかを検証することを目的としている。 本年度は、①の課題に対して取り組み、軟骨細胞においてCCN2がVASH1の発現を正に制御することを明らかにし、またVASH1がSOD2の発現を正に制御することを明らかにした。 現在、これらの結果をもとに、CCN2-VASH1-SOD2 axisが軟骨細胞に及ぼす影響を検証しており、進行状況は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. CCN2とVASH1による内軟骨性骨化の調節メカニズムを解析する。 血管内皮細胞においてVASH1はSOD2を誘導しROSのレベルを低下させるという報告があるため、軟骨細胞においても同様にROSのレベルが変動することが予測される。本年度の研究において、軟骨細胞においてCCN2-VASH1がSOD2の上流に位置することが示されたため、軟骨細胞の培養系でCCN2あるいはVASH1の発現を上げ下げすることによりSOD2の発現を変動させ、ROSのレベルが変動するか否かをROS assay kitを用いて解析する。軟骨細胞の分化が進行するとともに細胞内ROSレベルは上昇し、また増加したROSは軟骨細胞のアポトーシスを誘導するとの報告がある。そこで、前述の培養系でROSのレベルが変動するか否かを検討するとともに、アポトーシスへの影響をapoptosis kitを用いて解析する。内軟骨性骨化の最終段階である細胞死については諸説あるため、アポトーシス以外の細胞死(オートファジー、ネクロトーシス等)についても検討する。 2. CCN2とVASH1の骨・軟骨組織に及ぼす影響を検討する。 CCN2ノックアウトマウス、CCN2トランスジェニックマウス、あるいはVASH1ノックアウトマウスを用いて、CCN2とVASH1の成長板軟骨組織における関係性を解析する。これらのマウス由来の成長板軟骨組織切片で、CCN2あるいはVASH1タンパク質の有無・発現量の違いによる他方の分子の挙動を免疫組織化学染色法により解析する。また、CCN2とVASH1のタンパク質およびmRNAの局在をそれぞれ免疫組織化学染色法、in situ hybridization法で検出する。これらの結果から、CCN2とVASH1が骨・軟骨組織の形成にどのように関与しているかを検証する。
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