2017 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー移動特性を付与した14族元素架橋ビチオフェン骨格の開発
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17H06890
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安達 洋平 広島大学, 工学研究科, 助教 (50805215)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ゲルマニウム / チオフェン / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
Si, Ge架橋ビチオフェン(DTS, DTG)は、有機電子材料のπ電子系ビルディングブロックとして、広く研究が行われている骨格である。DTSやDTGを用いた過去の研究例では、Si, Ge上の置換基はアルキル基やフェニル基などのシンプルなものに限定されていた。申請者は、Si, Ge上の置換基に比較的共役の拡張したπ電子系を導入することで、DTS/DTG母骨格とπ電子系置換基との間でのエネルギー移動が可能となり、DTS/DTGに新しい機能性を付与することができると考えた。H29年度は、具体的に以下の実績を上げた。 ①比較的単純なπ電子系を置換基とするDTG誘導体の合成 Ge上にフルオレンやターチオフェンなど、比較的単純なπ電子系を導入した、新しいDTG誘導体の合成に成功した。当初の期待通り、これらの化合物ではDTG母骨格とπ電子系置換基との間でのエネルギー移動現象が観測された。一方で、ピレンを導入した系では多成分の発光が確認されたことから、DTG母骨格とπ電子系置換基のエネルギーレベルが極めて近接した系では、エネルギー移動が効率的に起こらないこともわかった。Si置換体であるDTS誘導体の合成も試みたが、残念ながら目的物は得られていない。 ②π共役系の拡張の試み 近紫外~可視領域でのエネルギー移動を可能にするため、DTG母骨格の共役の拡張を試みた。まず、ターチオフェンを置換基とするDTG誘導体の臭素化反応を試みたが、目的物は得られなかった。一方で、フルオレンを置換基とするDTG誘導体では、臭素化体を得ることができた。現在までのところ、フルオレン2量体を置換基に持つDTG誘導体の合成に成功しており、今後はDTG母骨格のπ共役系をカップリング反応によって拡張する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、合成は概ね順調に進展している。前述のとおり、DTS誘導体などの一部の化合物の合成は達成されていないが、比較的シンプルなπ電子系を置換基とするDTG誘導体の合成には成功している。また、それらがエネルギー移動特性を持つことも明らかにしている。発光量子収率は予想していたよりも低かったが、エネルギー移動の効率は極めて高く、様々な用途への応用が期待できる。 前述のとおり、チオフェン環をGe上の置換基に導入した系では、DTG母骨格のπ共役系の拡張が困難であり、分子設計に大きな制約が生じている。現在は、フルオレン2量体を置換基としたDTG誘導体の合成に成功しており、今後はこの分子のDTG母骨格を臭素化し、π共役系の拡張を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を元に、研究を進める。H30年度は、具体的に以下の検討を予定している。 ①π共役系の拡張 近紫外~可視領域でのエネルギー移動を可能にするため、DTG母骨格の共役の拡張を試みる。具体的には、フルオレン2量体を置換基とするDTG誘導体のDTG母骨格へカップリング反応によりフェニル基を導入する。フルオレン2量体の近紫外領域の吸収エネルギーをDTG母骨格へエネルギー移動し、可視領域での発光を図る。 ②DSSC用色素の合成 近紫外~可視領域においてもエネルギー移動が起こることを確認した後、DSSC用色素の合成を試みる。具体的には、Ge上の置換基とDTG母骨格が共に可視領域において吸収を持つように分子設計を行い、またDTG母骨格には酸化チタンと結合できる吸着基を導入する。ただし、Ge上の置換基にチオフェン環を導入する分子設計が制約されていることから、DFT計算等を用いて、構造を慎重に策定する。
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