2017 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体シャペロンを基盤としたアルドステロン合成制御機構の解明と創薬標的分子の探索
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17H06893
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
一町 澄宜 広島大学, 病院(医), 助教 (00805666)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 循環器・高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルドステロン産生腺腫 (APA)、非機能性副腎皮質腺腫 (NFA)、ヒト副腎皮質癌細胞株 (HAC15)におけるアンギオテンシンII,カリウム,cAMP刺激、およびHAC15にアルドステロン過剰産生を示す遺伝子変異を導入し樹立したアルドステロン産生腺腫のモデル細胞株においてマイクロアレイ解析を行い、さらに既存のBioinformaticsデータベースやRNA-seqによる臓器・組織別遺伝子発現解析データベースなどを活用し,アルドステロン合成に最も関わる小胞体因子calmegin (CLGN)を選抜した。 続いて、CLGNの発現をAPA48例、NFA13例での腫瘍組織より抽出したRNAにおいてqPCRで検討し、CLGNがNFAに比べてAPAで有意に発現が亢進していることを確認した。さらに上述のAPAやNFA、Splague-Dawley ratの副腎組織で免疫組織化学染色を行うことにより、CLGNはAPA腫瘍部で発現が亢進し、さらにアルドステロン合成酵素 (CYP11B2)と一致した局在であることを確認した。一方、CLGNはNFA腫瘍部では発現を認めないものの、腫瘍周辺にみられるAldosterone-producing cell clusters (APCC)ではCYP11B2と一致した局在でCLGNの発現を認めた。ラット副腎皮質球状帯組織における検討では、CYP11B2は球状帯に一致して発現を認めるものの、CLGNの発現は認めなかった。以上より、CLGNはAPAにおけるアルドステロンの自律過剰産生に深く関与する因子であることが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における当初の研究計画では、アルドステロン合成に関わる新規小胞体シャペロン鍵分子の同定と発現解析として、1. アルドステロン合成に関わる新規小胞体シャペロン鍵分子の同定、2. アルドステロン合成に関わる小胞体シャペロン鍵分子の発現解析、3. アルドステロン産生腺腫 (APA)におけるCYP11B2との関連の検討を予定した。さらにアルドステロン合成に関わる小胞体シャペロン分子の機能解析 (In vitro解析)として、4. In vitroでの標的因子操作による機能解析を予定した。 1. に示した「アルドステロン合成に関わる新規小胞体シャペロン鍵分子の同定」については、我々の豊富なデータベースを活用することによって最もアルドステロン合成と関連があり、またこれまで当該分野で報告のされていない新規因子CLGNを同定することができた。 2. 及び3. に示した「アルドステロン合成に関わる小胞体シャペロン鍵分子の発現解析」、「APAにおけるCYP11B2との関連」については、充分なサンプル数での検討を行うことによって、CLGNがAPAで見られる自律性のアルドステロン合成に関与している因子であることが推定され、当初の予定より詳細な検討を行うことが出来た。 4. に示す「In vitroでの標的因子操作による機能解析」については、現在ヒト副腎皮質癌細胞株 (HAC15)に遺伝子導入を行い検討中である。これまでの結果からCLGNが調整するアルドステロン合成の機序について複数の候補が推察されており、その中のいくつかに焦点をあてqPCRやウエスタンブロッティングなどを行い検討している。 以上の進捗より、本研究についてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. In vitroでの標的因子操作による機能解析 ヒト副腎皮質癌細胞株 (HAC15)におけるCLGNがステロイド合成酵素やアルドステロン合成に与える影響を,遺伝子操作の上、拮抗薬や阻害薬を用いて検討する.分子シャペロン活性について、ELISAキットやqPCRやウエスタンブロッティングを組み合わせて測定を行う。 2. 高アルドステロン血症ラットモデルにおける小胞体シャペロン調節 Splague-Dawley ratを低ナトリウム食で飼育することにより、レニン・アンギオテンシン系が亢進し高アルドステロン血症の モデルラットを作製し、小胞体シャペロン鍵分子に関わる化学物質の投与などを行い表現型に与える影響を検討する。 3. 作製した動物モデルの表現型解析 作製した動物モデルに対し、血圧、アルドステロン濃度を測定し、心臓や腎臓を摘出し臓器障害を検討する。摘出した副腎組 織においては,CYP11B2発現を,qPCRや免疫組織化学染色を用いて評価し,mRNAと蛋白発現の差や,鍵分子の発現量を解析することで分子シャペロンの指標となる。また、副腎皮質球状帯をDAB2抗体で免疫組織化学染色し、新規に同定した因子やシグナル伝達が副腎皮質球状帯成長に及ぼす影響を検証する。
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