2017 Fiscal Year Annual Research Report
Incentive structure of policy implementation gap: empirical analysis of causes of failures in consumer protection policy
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17H06916
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
福井 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (00304642)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 政策分析 / 政策実施 / インセンティブ構造 / 消費者保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、《損失回避行動仮説》の検証を行った。過剰予約による非自発的座席放棄に対する補償最高額は、2011年にそれまでの800ドルから1,300ドルに増額され、2015年には物価調整のためにさらに1,350ドルに引き上げられた。この2回の補償最高額変更を活用したイベント・スタディ的手法での推定により、旅客が損失回避的行動をとったか否か、つまり、補償最高額を参照点として座席放棄による損失を可能な限り減らすため、自発的座席放棄ではなく非自発的座席放棄を選択するという政策の意図に反した行動をとったか否かを検証した。 データは、米国運輸省が公開しているPassengers Denied Confirmed Space Reportをベースとした。各社の各四半期の非自発的座席放棄旅客数を被説明変数とし、補償最高額変更ダミーを主要な説明変数とする推定を行った。被説明変数に0が非常に多いというデータの性質や説明変数の内生性を考慮して、推定手法としてはTwo-step negative binomialを用いた。 推定結果からは、各社の非自発的座席放棄旅客数の四半期合計値は、2011年および2015年の補償最高額増額以降、それぞれ約345と846増加した、という示唆が得られた。推定結果からは同時に、最高補償額の増額は航空会社により積極的に自発的座席放棄を募らせる十分なインセンティブとしては機能していない、という示唆も得られた。これらの推定結果は、補償最高額の増額が、非自発的座席放棄に至る旅客の数を減らすという点では効果的ではないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は過剰予約に関する消費者保護の実証分析を行った。分析結果は、International Transportation Economics Association、Air Transport Research Societyにおいて報告を行った。その後、2017年8月にInternational Journal of Industrial Organizationに投稿、現在、第2段階の査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究の進捗は順調である。今年度は、《戦略的欠航増大仮説》の検証を行う予定である。同時に、政府による補償最高額増額という政策以外の航空会社の工夫が、自発的座席放棄発生率、非自発的座席放棄発生率に与えた影響も分析する。分析結果は、Air Transport Research Societyにおいて報告を行う予定である(報告申請採択済)。
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