2017 Fiscal Year Annual Research Report
膠芽腫におけるがん精巣抗原遺伝子を標的とした治療法の開発
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17H06920
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
福田 仁 高知大学, 医学部附属病院, 特任講師 (80807917)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 膠芽腫 / 幹細胞 / がん精巣抗原遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫は、精力的な新規治療法の開発にも拘わらず、長い間、顕著な治療成績の向上が得られていない原発性脳腫瘍であり、平均余命は僅か1年数ヶ月である。この腫瘍の治療抵抗性は、放射線治療や化学療法への感受性の低さ、浸潤能の高さに起因している。悪性脳腫瘍には造腫瘍性に富む幹細胞が含まれ、悪性度の指標となる多くの性質を保持していることから治療標的として注目されている。 がんワクチンの標的分子として知られているがん精巣抗原遺伝子は、約200程度が同定されているが、その発現制御機構や機能の大部分は未知である。これまでに膠芽腫幹細胞においてがん精巣抗原遺伝子が高発現することを明らかにしているので、本課題では、この遺伝子群の治療標的としての有用性を検討することを目的とした。まず、これまでに解析に用いてきた膠芽腫細胞株に由来するがん幹細胞を多く含むTumor sphere (TS)に加えて、膠芽腫患者の手術摘出サンプルから新たにTSの樹立を行った。膠芽腫患者8人からTSを樹立し、MLPA法やSanger sequencingによりIDH1/2の変異や1p19qの欠失の遺伝型を決定した。次に、膠芽腫で発現する頻度が高い30のがん精巣抗原遺伝子から、幹細胞で発現が高いもの13遺伝子に関して、膠芽腫細胞株と幹細胞においてsiRNAを用いてノックダウンを行った。そのうち、2つのがん精巣抗原遺伝子がノックダウンにより膠芽腫細胞や幹細胞の増殖を抑制することが観察された。このことから、がん精巣抗原遺伝子の一部は、膠芽腫細胞の増殖の制御に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たに膠芽腫患者から幹細胞株を樹立したことで、今後、より臨床応用に適した解析が可能となった。膠芽腫の増殖を制御する遺伝子も一部同定出来た。しかしながら、がん精巣抗原遺伝子の発現制御機構の解析に着手出来ていないので、この遺伝子に関与する発現制御因子を同定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
がん精巣抗原遺伝子のモニタリングシステムをゲノム編集により導入し、siRNAライブラリーを用いてこの遺伝子群の制御因子を探索する。がん精巣抗原遺伝子のノックダウンにより増殖抑制を示す分子機構をRNAシークエンシング等を用いて明らかにする。がん精巣抗原遺伝子内で相同性の高い遺伝子グループに分類し、グループ毎にノックダウンを行い、増殖抑制効果を検討する。これにより、単一のがん精巣抗原遺伝子がノックダウンされる際にグループ内で他の遺伝子が補償している可能性についても検討を加える。
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